第4話

ぐるりと私は教室の中を見渡す。


が、あのダークブラウンの男は不在のよう。


「今日はいねーよ、藍は」


「どこにいんの」


溜まり場?

私はじっと椿を見れば、今度は椿が少しだけムッとした表情になる。


「さぁ、しらね」


「ふーん」


なら、仕方がない。

アイスの件は、また今度だ。


「じゃあ、いい」


私はそう言って、この場から立ち去ろうと椿とその教室から背を向ける。


「おい、里奈子」


あ、


ふわり。


と奴の甘いムスクの香りが強くなる。



背を向けた私に、後ろから抱き締めるように私の腹に腕を回し反対の手で私の手首を掴む。


…公衆の面前でなんて奴だ。



他色を絶対に許さないダークヘアの髪が首筋に当たって擽ったい。

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