第93話

「うわぁー!慧くん!!勉強教えて!!」

限界に達した様子の陽向は、慧二郎さんに勢い良く飛びつき、慧二郎さんの気品纏う着物に皺を作る。


そんなことも気にせず、慧二郎さんは小さな子供をあやす様に陽向の頭を撫でる。


「テスト勉強かの。学生の仕事じゃき頑張り」


諭すようにそう話す慧二郎さんはこの中で一番落ち着いた雰囲気を見せている。


それもそうなんだろうけど。

陽向情報曰く、慧二郎さんは、既に社会人らしく、藍の家で働いているらしい。そして、この傍らで藍の世話役として定期的に様子を見に来ている。


人を雇うぐらいだから藍の家はどうやら金持ちなんだろう。



「穣さんは、余裕そうじゃの」


慧二郎さんを見て、自分の家族の愁やシロのことをふと思い出していれば、


そうやって関心するように話しかけてくるのは慧二郎さん。

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