第84話

「あーちゃん!! それ、りなちゃんにあげたやつでしょー!ダメだよ、とっちゃいけません!!」


亜貴が来てくれたのが嬉しいのか、ぴょんぴょん尻尾を振りたくる陽向は子犬にしか見えない。



「あーハイハイ。だから、里奈子ちゃんにあげるんでしょうよ」


肌けすぎてるワイシャツに緩いダボッとしたカーディガン、その袖から覗かせる繊細な手で飴玉の包み紙をあける。


気を抜けばその動作ひとつにさえ見惚れそうになる。


その時、飴玉を私の目の前で掲げ、亜貴のその綺麗で妖艶な切れ目を流しつつ私を捕らえる。


ニヤッと口角をあげた時、


「んぅ」


その飴玉はそのまま私の口元へ放り込まれた。


ピンク色の飴玉。


コロコロと、左右に飴玉を動かしながら、

今日は、イチゴ味なのか


呑気な事を頭の中で考え、口の中に広がる甘いその味に少しだけ幸せな気持ちになり笑みを零し、満足気に堪能する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る