第67話

「待て、里奈子」



このタイミングで奴は私の名前を呼ぶのか。



全員藍の方へ視線を向ける。



「アイツらとの決着が着くまでだ。

そしたら、元通りの生活に戻してやる。それまではここに通え」


ダークブラウンの無造作にセットされた髪から覗かせる瞳が私だけを捕らえてる。



「巻き込んだ女をそのままにしとくのもメンツたたねぇし。わりーなシノハラさん」


絶対悪いと思ってなさそうな顔の前で両手を合わせる亜貴。



どんな意図があって奴らはそう言ってるのか知らないが、

「私に利用価値なんてないと思うけど」


私が思うことはそれだ。


藍の隣で様子を伺うようにチラチラ私を見てる陽向や、気品漂うオーラを纏い私を見てる慧二郎さん



奥の方でこちらを見ずにひたすらパソコンを操作している波玖という男も


こんな厄介事ごめんだ、と言ってくれて構わないのに。

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