第68話

「それはお前が決めることじゃないだろ」


藍は、伏し目がちにため息をひとつ吐き、

そっと私を見る。


「利用価値があるかないかなんて俺が決める」



重い腰を上げ、目の前のソファに座る私の所まで来れば目線を合わせるように片膝を床に付ける。


「もう決めたことだ。諦めろ」



「絶対意味ないと思うけど」


「どうだろうな。賭けてみるか」


「めんどくさい」



「お前、自信ねぇのか」


負けず嫌いの私には十分すぎる挑発に満ちたその言葉と表情。


ここに連れてこられた時から、話なんて噛み合うことはなかったから。



ここでどう抵抗しようとしても、奴らはすんなりとは帰してくれないはず。



目の前にいる極上すぎる男を鋭く睨みつける。



「上等だ」


私は力強くそう言った。

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