第53話

「ほら、早く」

更にグッとこいつは私を自分の方へ引き寄せる。


早く言えよ。

と、言わんばかりに、私の腰を撫でるその手は止めることはなく。



「…っ、つばき」



これでいいんでしょ。


私は不満そうな表情でもう一度椿を見る。



こんな変態男に言い負かされるなんて、屈辱だ、悔しい。



こんな姿をもし愁に見られたとしたら鼻で笑われる。



「よせ。もう着く」


今度はなんだ。


私の腰に撫でていた椿の手は、藍によって離される。



「なにここ」


変態男の相手をしているうちに、さっきまで見ていた景色とはガラリと変わっていた。



一般の人じゃ絶対に近寄れないような、大きく建っている倉庫。

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