第44話

するとみるみるうちに不機嫌な表情に変わり、


「誰からソレ聞いた」


と。



キングって呼び方は嫌な様子。

まぁ呼び方なんてどうでもいいけど。



「五十嵐、てめぇその女となに見つめ合ってんだ」

三角巾の男は舌なめずりしつつこの展開が面白いと言わんばかりの挑発じみた声を出す。



「てめぇらこそどこのモンだ」

その声だけで十分威嚇材料になっているのか、この集団はキングには数メートルから近くには寄れない。


寄り付くことが出来ない。



シンと静かに流れる空気に、

仄かに届く甘いムスクの香り。



…誰か、来た。




「待て、藍」

横を向けば、こちらに近づいてくるのは意外にも昨日キングとやり合っていたNO.2の祠堂椿。


昨日のあの狂気じみた鋭い目や雰囲気は一切なく、少し眠そうな怠そうな表情はとても甘ったるく人を簡単に酔わせそうなほど。

キング同様にこの男も信じられない程の抜群なスタイルで、他色を絶対許さないダークヘアはこの彼をキングにも負けない程の絶対的存在感にさせている。


そんなNO.2が私達の所まで来て足を止まる。


ナニかを確認するように私の顔をじっと見る。

「お前なに考えてる」

キングの問いにも、


「別に」


軽く受け流し、そして、

キングに捕まったままの私の耳元で

「亜貴の女だと信憑性でねーからな」

そう囁いた瞬間



煙草と甘いムスクの香りが混ざるような大人の香りが強くなる。


ちゅっ。とワザと音を立てるような意地悪いキス。

そう…このNO.2の唇が私の唇に優しく触れるのがワンテンポ遅れて理解出来た。

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