第38話

「リナこっち来い。髪乾かしてやる」

体を起こし座り直す愁の元へ向かう。

ソファに座る愁の下に座り込むと、ドライヤーをそっと私の髪へかけはじめてくれる。

なんとも世話焼きな男だ。



「綺麗だな」

「…む。」

「髪色だよ」

なんとも意地悪い。

日本人特有の黒髪でもない、かけ離れた色素が抜けたような少し明るめなミルクティーベージュのこの髪。

もちろん染めたわけでもなく、これが私の地毛。


「気持ち悪いだけでしょ」

目を伏せ私はため息を零す。

コレが綺麗だというなら、愁の髪の方が全然綺麗だ。

「んな悲しいこと言うなって」

少し声のトーンを低く落とし私の髪に触れる愁の手は更に優しくなった気がした。


しばらくして、愁に髪を乾かしてもらいそのまま私は適当にテレビを見たりして寛ぐ。

愁も愁で再びソファに横になりながら膨大な量の書類に目を通しはじめる。

……せっかくの休息の時ぐらい休めばいいのに。

なんて思っても、彼のプライドに踏み込むことは私はしない。

気づいたら、丸まって目を閉じて寝てる愁。やっぱり流石の愁でも疲れるのは当たり前だ。

絶対に私の前では弱音なんか吐かないが、立場もあり若いが故に働き詰めにそれなりに苦労はしているだろう。

こんな所で寝たら身体痛くするし風邪引く。

寝室から持ってきたタオルケットを丁寧に愁に掛け、リビングの照明を落とす。


「おやすみ、愁」

私はそっと寝ている愁にそう言いリビングを出る。

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