第36話

私より早く、後部座席の扉を外から開けるのはシロ。

「鞄貸してください」


シロの日焼けなんて程遠いような真っ白な肌がスーツからさらけ出される。


自分で持てるんだが、愁と同様1度言ったことは絶対に曲げないシロの事はもう熟知している。

だから、ここは素直に従う。


鞄をシロに預け、車から降りる。


シロは女に対して扱いが物凄く丁寧だ。


過去に1度そのことを本人に言ったことがある。

すれば、シロは、「それはリナさんだけですよ」と訳分からない言葉で返された。


事実、シロはずっと愁に付きっきりの為女と遊ぶ暇はないんだろうけど。



「腹減った。リナ、飯つくれ」


地下駐車場から最上階まで直通可能なエレベーターに乗り込む。


相変わらずなシュウ様を今日も発揮してくれやがる。

「愁、仕事はどうしたの」

「ああ、今日の朝片付いた」


このまま部屋まで向かって飯を食うってことは、休みを貰えたってとこだろう。今日は帰るつもりもないってことだ。


今日の朝片付いたってところから、シロに私の面倒を頼んだのがわかる。


そんなシロの手元には私の鞄の他に小さな袋が持たれている。

なるほどね、既に食材は買ってあるってことか。


「シロは食ってく?」

「いえ、私はまだ野暮用があるので。愁さんとリナさんを部屋まで送り届けたら帰ります」


相変わらず仕事人間な奴だ。

愁や上の人間の命令なんて偶にはサボればいいだろうに、そうもいかないのはこの世界がそんな温い甘い世界ではないからで。



「じゃあ、愁さんまた明日の朝迎えにあがりますね。リナさんもゆっくり休んでください」



マンション最上階まで着き、ほんとにシロは荷物を部屋の中まで運んだらそう挨拶して帰ってった。

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