第34話

校舎外だろうが構わず声掛けてくる知らない連中達に目もくれず私は早足で奴の待つ車まで向かう。



校門なら少しだけ離れた所に駐車された、この周囲には不釣り合いに存在する朝と同じ黒塗りの高級車。


スモークガラスになっているせいで中は見えないが、恐らく奴も乗ってるはずだ。

私は、後部座席の方へ乗り込む。



「編入初日から男遊びか、リナ。」

乗り込んだと同時に、助手席から聞こえてくるよく聞き慣れた男の声。

そして、思ってもないくせに愉しげにそう言うもんだから、ムカついて私は自然と眉を寄せた。


「愁」


窘めるように私は助手席の男の名前を呼ぶ。

ゆっくりと顔だけ後ろを振り向き私を見て優しく笑う。


「よお、リナ」


相変わらず光沢のある黒の高級スーツを綺麗に着こなすのは流石だ。

後ろ流しに綺麗に整えられた漆黒の髪は彼の存在感を絶対的に強く引き出させている。

綺麗に縁どられた目、鼻、唇、どのパーツも完璧だ。非の打ち所のない容姿は昔からなにも変わってない。

愁は、顔は良いんだと思う。

現にこいつはモテるし、大モテだ。


私をリナ、と呼ぶこの男は

會澤 愁 (あいざわ しゅう)

私の4つ上の義兄。

忙しい家業の傍らでこうやって私の目付け役もしている男。

一応身内になる愁だけど、出会ったのは10年ぐらい前になる。

このリナは、里奈子から取っているらしい。呼び方も出会ってからずっとだ。

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