第23話

「みんな、アンタの事噂してる」


私の頭上からそんな言葉が降ってくる。



ベンチの上に横になり閉じていた目を少しだけ開ければ、



「ふーん。ホントだ、騒ぐだけある」



目の前でしゃがみこんで私の顔を確認するかのように覗き込むアッシュグレーの少し長めの髪をした少し日本人離れした男がひとり。



「誰、あんた」


「ハハッ。口悪いのも噂通り」

「おい、天音。やめとけよ」


ど失礼極まりないこのアッシュグレーの男にひと言窘めるのは、その一歩後ろに立っている目つきの悪いシルバーカラーの短髪男。


「はじめまして。全日に綺麗な女が編入してきたって廊下でちょっとした騒ぎになってたから、気になって見に来たんだよ。あ、俺、天音(あまね)ね。」

゛呼び捨てでいーよ゛と言ったのと同時に私に手を差し出す。

ペラペラと喋り倒すこの日本人離れしたような顔立ちにアッシュグレーの男は天音と言うらしい。

されるがままに、出された手に自分の手を添えればグッと身体を起こされる。



「で、こいつは稜(りょう)」

天音より少しだけ身長が高く、恐らく目付きが悪いだけなんだろうがギロっと睨みつけるようにこちらを見るシルバーカラーの短髪男は、稜。



「゛全日゛に編入してきたお姉さんの名前、教えてよ」


全日に編入…

ああ、全日制、ね。


「…篠原 里奈子。なんか用なの」


「りなこ、りなこね」と呟く天音は、シャープな顎に自分の手を添えながらなにか考えた事をしているらしい。

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