第21話

目線を俺たちに向けてくれるのはたった1.2回ぐらいだけだった。


本当に笑わない、話さない。

そして、零れ落ちそうな程に大きくて丸っとした瞳は俺たちのことは決して写そうとしない。


いくら美人な女でも、ここまで愛想ないと可愛くない。



そう思えば、案の定あーちゃんも思ってたみたい。

でも、あーちゃんさ、手厳しい女でもいいなんてさっき言ってたくせに。



「うるさい」


やっぱり、女にしては低い声。



愛想なくて可愛くない女だけど、この声は好きだな。



春は俺の全てを奪っていく嫌いな季節だけど




今思えば、100の別れがあるとしたら、1の出逢いがこの里奈子とのならば、春も悪くはないって思える。



そう優しく暖かく、甘い気持ちに気づけるのはまだまだ先のことだけど。







ーーFin

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