第20話

「へぇ。びっくりするほど綺麗な顔してんね、シノハラさん」


あーちゃんのその言葉は本当だと思った。


幼く可愛さも少しだけ混ざる、だけどすげぇ美人な女が目の前にいた。

制服から覗かせるスラッとした手足と、細長い柔らかそうな首元、女特有の丸くて華奢な肩、ふわふわとした綿菓子のような腰あたりまであるミルクティー色の綺麗な髪。

小さな顔に、色素の薄い茶色の瞳が大きく2つ並び、マスカラなんて要らないぐらいの長い睫毛、キュッとした鼻と柔らくてピンク色唇。

どのパーツもほんとに形が綺麗に揃ってる。

ナチュラルメイクさえこの女には必要ないんだろうな。


さっきあーちゃんに猫なで声で甘えてた馬鹿女とはかけ離れている。


すげぇ綺麗だ。


ボーッと無表情なこの女は、必要最低限以外は喋んないから、気を抜けばお人形さんなんじゃないかって思うほどだ。


そんな女に、この空間にいる俺たちみんな見惚れる。


女は好きだけど自ら興味持つことは皆無なあーちゃんでさえ、塩崎ちゃんが教室から出てった後も声かけるほど。



女なら誰でも、あーちゃんに話しかけられるだけで喜ぶはずなんだけど、




どうやら、このお人形さんは違うみたい。


「そうですか」

あーちゃんや俺の言葉はもちろん、名前も存在もまるで興味なんかないと言わんばかりの素っ気ない言葉。

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