第13話
「富浦と観月、適度に仲良くしてやれよ」
゛適度にな゛をやけに強調させた担任は、私に窓側の一番後ろ座席の指定をしてそのままホームルーム…というか任務を終わらせたとかで教室を出て行った。
その瞬間、どっと騒がしくなる教室内。
そして、まばらに教室内を出ていく者も何人かいる。
そんな様子を片目に見つつ、私は机に顔を埋めようとした時、
「シノハラさんシノハラさん」
私は自分の名前を2回繰り返して呼ばれた。
あぁ、コイツ、私の隣の席だったのね。
出来ればその窓側変わって欲しいぐらいだ。
「なにか用かな」
できるだけ声のトーンを明るくして、普段使わないような笑顔を浮かべる。
ー゛とりあえず笑ってそうですかっつっとけ゛
アイツの助言を使う時が早速きたわけだ。
「わぁ!喋った!喋ったよ、このお人形さん!」
む。
自然と私の口はへの字になる。
…このお人形さんって、私はお人形さんでは無い。
そして、キラキラしたその目で私を指さすな。
「あのね、ひなちゃん。どう見ても生きた人間でしょうよ。それに」
そう一拍おいて、
チラッと私の方へ視線を動かした、気怠気なその男。
間近で見れば分かるけど、
「シノハラリナコだってさっき自己紹介してもらっただろうよ」
この男、本当に高校生なのか。
藍色の緩やかなパーマが彼を纏う妖艶な雰囲気によく似合っている。
切れ長の大きな茶色の瞳、口元にあるホクロと決して人工的ではない自然な紅く映えた唇がこの男の放つその雰囲気を造っている要因だろう。
同じ制服なのにどうしてそんなにも洒落て着こなせるか分からない、ワイシャツ肌はだけすぎだけど。
「美人なシノハラさんにそこまで見つめられるなんて悪い気はしねーじゃねぇのよ。」
こいつの饒舌にペラペラ薄い言葉を述べるのは元からの癖なのか性格なのか。
建前で言ってるつもりなら、表情には気をつけた方がいい。
アンタのその目、びっくりするほど冷たい。
「富浦亜貴(とみうら あき)な、シノハラさん。」
気怠気にのらりくらりとした話口調のそいつの名前。
藍色の緩やかなパーマのかかる髪をした男、
富浦 亜貴。
「俺、陽向。観月陽向(みづき ひなた)」
富浦亜貴の目の前で、両膝を抱えるもう1人の男。
明るいはちみつベージュのふわふわした髪と、
ぱっちりとした二重と透き通るような黒の瞳、富浦亜貴に見せるふにゃっとした砕けた表情が、彼の甘ったるくて可愛らしい顔立ちを加速させる。
雑誌に載るモデルの女に余裕で勝てるようなその顔立ちをした男。
観月 陽向。
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