第12話

中の雰囲気的には、他にも数十人はいるはずだ。


他の奴らがただ大人しいだけか、

いや、

ただ単にこの担任と対等に言い合えるのがこの教室だとこの2人だけ、という所なのか。



「…………で、外にいるのダレ」




気づいてたのか。


気怠気に話す男の声の先には私だ。


コイツ、ずっとここに私がいると分かってたのか?



「あー、そうだ。ッチ、お前らの話に付き合ってる暇はねぇんだよ。ほら、入ってこい」

最初の言葉は彼等に向けて、

そして、最後の゛ほら、入ってこい゛は私に向けて担任は話す。



「え!なになに!」

キャッキャ楽しそうな可愛気のある声を弾ませたのを聞くのと同時に私は中へ入る。




そして、また一瞬静かになる空間。






「編入生だ」

そう言って担任は私の方へ視線を移す。

名前をいえ、ってか。



「篠原里奈子(しのはらりなこ)」

そう自己紹介をすればため息を零したくなる。


自分の旧姓を使う時がまたくるなんて思ってもなかった。



まぁ、やつ曰く身バレ防止だとの事だが。


この空間の静けさは変わらない。

ざっと見た感じこの教室内には女はいない。


そして、チラホラ見える廊下にいた奴らと変わらないようなガラの悪い風貌の不良達が数十人。


幸い教室内も綺麗だ。

想像していたよりも、だ。


「へぇ。びっくりするほど綺麗な顔してんね、シノハラさん」


そしてまた、奴はこの静かな空間を突き破る。

さっきまで聞こえてた気怠気な声に妖艶さを付け加えて。

私はその声に視線を辿る。



…居た。



あいつか。 担任、塩崎と対等に話してたうちのひとり。



そして、きっとー…




「ね!あーちゃん、あの子すっごいお人形さんみたいじゃない?!わー喋んのかなぁ〜」


やっぱり。気怠気のあるやつの席の前で、元気いっぱいに楽しそうな可愛気のある声を変わらず弾ませるそいつ。


さっきから会話の中心人物にいた残りのひとり。

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