第10話

「おーい、篠原。おいてくぞー」

常時棒読みな担任が私に早く歩けと意味を込め催促する。


フワッと風がまるで私の背中を押してくれるかのように吹く。



この時期はやっぱり好きだ。



人を、暖かい気持ちにさせる。





「あともう少しで教室だからなー。緊張してないか?」

「いいえ、全く」

担任に追いついた私は、怪訝そうに私を見る担任と横並びで歩く。



全日制の棟に入った瞬間から、痛いほど突き刺さる視線。


ーーー「おい、見ろよ。塩崎(シオザキ)の隣に歩いてる女、すげぇ綺麗じゃねーか」

ーーー「見ねえ面だけど、転校生か?」

ーーー「なに、あの女」

ーーー「リボンが青ってことは全日じゃない」



聞こえてくる聞こえてくる。


どこからともなく聞こえてくる言葉。

男からも女からも向けられる好奇の目と話し声。


てか、この担任、塩崎って苗字なのか。

なんでどうでもいい情報を頭の中にいれる。

そんなにこの時期の編入は珍しいものなのか、それとも女の比率が少ないが故に女の編入生が珍しいのか。


どちらにしても、この視線たちはウザイ。

心の中で軽く舌打ちする。


「ようやく着いたな」

そんな中で、ようやく教室に辿り着く。ガラッと扉を勢い良く開け中へと入っていく担任。

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