第9話

「先生。私、気にしてませんから」

ニコッと、慣れない笑みをぎこちなく飾る。


別に、馴れ合うつもりでこんな所に来たワケではない。



不良校だろうと関係ない。

そもそも、興味がない。



ただ、2年間だけ通えばいいだけだ。

変な思い出作りなんて、私には要らない。必要ない。




「そ、そうか。じゃあ、篠原、とりあえず教室へ行くか」

そう言って、教師は立ち上がる。


私も黙って、その後ろを着いて歩く。



私のクラスとなる教室は、2-A。

どうやら、職員室とは別棟にあるとの事。


この学校は、3棟に建物が別れており、それぞれA棟B棟C棟と呼ばれているそうだ。

それは、私が編入した゛全日制゛がA棟、゛定時制゛がC棟、その他職員室も含めてB棟に分けられていると、長い廊下を歩きつつ担任は私にそう説明してくれる。

定時制がある分、少しだけ複雑な仕組みなんだろう。

A棟とB棟を繋ぐ渡り廊下を歩く。


横目で外を見れば、ピンク色に染まる花びらが舞っている。


綺麗な、桜が踊るように舞っている。




どこでも、どこからでも見るこの景色は汚れがない。




一瞬だけ、目を閉じ、そして拳を作りギュッと力を入れ込む。

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