第3話

踵を返す前に、




「ー…響」



「よろしくお願いします」


深く、深く私は彼に頭を下げる。





既にもう一本タバコを箱から取り出す彼は、

ライターの火を付けながら、



「あぁ。心配するな」


昔から変わらない、心地の良い言葉。



「リナも、がんばれよ」

その言葉を、彼を、その建物に背を向ける。





また、今度。


そう心の中で呟く。




呟いて、願えば、ポンっと儚く、そして切なく消え去る。



淡くて、小さな、約束事。

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