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第1話

街一帯を見渡せる丘の上。

まだ残る寒さとこれからはじまる春特有の心地の良い暖かさが混ざる空気が少しだけ気持ちがいい。



桜満開に囲まれたこの砂利道を歩けば、ようこそといわんばかりに待っている木目調にできた建物と、沢山の大きな遊具に砂場。

そして、元気いっぱいの子供たちの声。


その声が自分の耳まで届けば、さっきまで膨らんでいた緊張と不安が少し、ほんの少しだけ和らぐのがわかる。




「リナ」

下向きだった私の視線は、不意に自分の名前を呼ぶその声の主の方へと顔ごと向ける。


木目調にできた大きな建物の入り口の門の前で佇んでいる彼は、恐らく私を待ってくれていたんだろう。



1歩、2歩と、少しだけ歩調を早めて彼に近づく。


「よお、元気か」

口元にはタバコを咥えながら、そして柔らかく目尻を下げて彼はいつもの決まり文句を私に投げかける。



月に1度、私がここを運べば必ず聞いてくれる。


「…ん」

そして、紡ぎ出した私の短い返答に、

「元気いっぱいっつーことな」

と、彼の解釈もやっぱり変わらない。

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