第64話

アタシは無言でドアの鍵を解除してドアを開ける。


「何があったの?」


「何もない。」


「避けられる理由は聞いてもいい?」



拓実君は開いたドアが閉まらないように片手で押さえていた。


彼はアタシを見ているけど、アタシはその視線を避けるように俯いた。



「ねえ、黙ってたら分からない。俺は君の何を傷つけた?」



傷つけた… 、現実はそうじゃない。


きっと彼には何も落度なんてない。



アタシが勝手に傷ついてるだけなんだ。



チカと拓実君に。



言えない。


チカとの事も恭子の事も。

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