第47話
……アタシは駅に向かって歩こうとした。
だけど心は拓実君の事ばかり考えていて、気がつくと彼の部屋の前まで来ていた。
拓実君がこの部屋に入って行く所を下でアタシは見ていた。
インターホンを押すと拓実君が出てくる。
彼は驚いていた。
「なんで…?」
「なんでって、ダメなの?」
「みおチャン、俺はね……」
「分かってるの、拓実君が逃げるチャンスをくれた事を。」
「だったら来たらダメでしょう?俺を信用してるの?」
拓実君の表情がだんだん険しくなる。
「俺はそこまで大人じゃないんだよ。中に入ってしまったら君は……後悔すると思う。早く帰って。」
拓実君は玄関のドアを閉めようとした。
だからアタシは咄嗟にそのドアを掴んだ。
「今帰ったほうが後悔しそうなんだけど……」
そう言ったらアタシを見つめる拓実君の瞳が揺れた。
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