第21話

消えたデータの謎


 焼き鳥を十本食べた後で、ようやく私は一息つけた。


「でも考えれば考えるほど…不思議なんですよねぇ。どうしてデータが消えたのかな…」と私は冷静に考えても分からない。


「誰かが消したとか?」


「え? 私…そんなに恨まれてますか? 中崎さんが戻った時、他に誰かいましたか?」


「誰もいなかったけど…」


「…うーん」


「まぁ、何とか終わったし、乾杯」とビールのグラスを当ててくる。


 私もくいっと飲んで、大きく息を吐いた。今週はなんて日が続いたんだろうと思い返すと疲れが倍増する。


 ご飯を食べ終わると、中崎さんのマンションまで行く。お泊まり準備をするのだと言う。私はロビーで待った。


 しばらくすると、エレベーターが降りてきた。扉が開いたが、だれもいなかった。


 私は気にせず携帯を取り出して、今から家に帰ると母にメッセージを送る。


 送り終わって顔を上げるとシスターズの一人が私の目の前にいた。


「わっ」と思わず一人で声を上げる。


 シスターズの一人は黙って私を見ていた。


「な…何の用? あ、もしかして、怒ってる? でも…ほら、家に上がらないし…」


 私はゆっくりと後退りをしながら「わ、か、っ、た。…帰るから。一人で帰るから」と言って、マンションのロビーから飛び出た瞬間、私の脳に直接、映像が流れ込んできた。


 ゆっくりと脳内で再生されているのに、時間的には一瞬だった。


「え? …まさ…か」と私は声にならない音を出していた。


 振り返るとまだシスターズの一人がこっちを見ている。

 私は中崎さんに「ごめんなさい。一人で帰ります」とメッセージを送って、駅までダッシュした。


 今の何?


 嘘嘘嘘嘘嘘。私の全てが拒否をする。


 中崎さんからの呼び出し音が鳴る。


 でも私は電話に出れずに、走り続けた。改札をくぐり、ホームに行く。タイミングよく来た電車に飛び乗った。


「十子ちゃん、どうしたの? ロビーにいないけど…」とメッセージが届いた。


「すみません。お腹が急に痛くなって…本当にごめんなさい。帰ります」


「そんなの、言ってくれたら良かったのに」


 どうしてどこまでも優しいふりをするんだろう。

 私はメッセージを見つめたまま涙が出た。


「大丈夫? もう電車に乗った?」


 私は震える指で「はい」と押した。


「じゃあ…気をつけて。また明日」


 返事ができないまま私はじっとその画面を眺めていた。

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