第16話

思わずタクミから視線を逸らす。


そんな簡単に揺れ動いてしまう自分の心が許せなくて。




「そろそろ、帰るか?」


「…う、ん」


そんな心を無理やりに振り払って立ち上がろうとしたあたしの目の前に手が差し伸べられる。


「……」


その手を取るべきか、悩む。


否、悩むこと自体、おかしいはずなのに。


そんなあたしの心の戸惑いを知ってか知らずか、タクミが手首を掴んできた。

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