第87話

昼休み──


偶然会った渡り廊下で、凌汰は周囲を気にしながら、そう耳打ちした。


聞き逃しそうなくらいの小さい声で。


え?と声にならない声で凌汰を見上げる。


彼はうん、と頷き、目を細め、口元を緩ませる。



「──ごめん」


今更ながら、無理なお願いをしてしまったと、わかっているからこそ、自然と謝罪の言葉が口から溢れ落ちた。

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