第74話
いったいどれくらいそこにいただろう。
それは、空が藍色に染まり始めた頃。突然聞こえてきた。
ガタンとなにかの倒れるような音。
その音に、由希先輩の体がビクッと大きく震えた。
「…先輩…?」「──…」
先輩を呼んだ俺の声と重なるように聞こえた誰かの声。
それが、体育館の中から聞こえているのに気づいたのは、先輩の視線がそこを見ていたから。
いまにも、泣きそうな表情で。
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