第59話

それでも、先輩の苦しみが少しでも軽くなるなら。


わたしは何度でも先輩に「好き」をあげる。



「先輩…、」


グッと先輩の制服の袖を引っ張った。


その拍子に自転車が傾いて倒れそうになる。


先輩がハッとしたように慌ててハンドルを掴むのを目の端に入れながら


わたしは少し背伸びをして、先輩の唇に自分の唇を押しつけた。



そのとき、先輩の肩越しにもう一度見た月は、やっぱり嘲笑っているように見えた。

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