第24章

第33話

「こんな気持ちが沈んでいる時に限って、仕事が捗らなくて残業…早く帰りたかったのに…」


仕事が終わって、私はエレベーターのボタンを押した。


エレベーターの扉が開いたその時…。


「あっ…」


雪見副社長と偶然、鉢合わせした。


『気まずい…今一番、顔合わせたくなかったかも…』


閉鎖空間に沈黙が広がる…。


「名月さん、あの…夜遅いので、送っていきますよ」


副社長の低く、優しい声が沈黙を破った。


「えっ…?」


「こんな時間に女性一人、歩かせられません」


「で、でも…私、大丈夫ですから…!!」


エレベーターの扉が開くと、私は逃げる様に外へ出た。


『自分から告白したのに…何で上手くできないんだろう…』


自分が情けなくて、涙が零れた。


私は泣きながら、ゆっくり歩く…。



「お姉さん、一人?泣いてるの?」


知らない男が未希に声を掛けてきた。


「えっ…!?いや、そんなんじゃ…!」


『…そうだけど、怖い…!!』


私は、必死に逃げる…けれど…。


「こんな時間に歩いてさ〜こう言う事されたいって事なんじゃないの〜?」


男が未希の足を触ってきた。


『ッ…!!気持ち悪い…!!』


「誰か…!助けて…!!」


私が叫んで、次に目を開けた時には、男は気絶していた。


目の前には、雪見副社長が私を守る様に立っていて…。


助けに来てくれた…。正義のヒーローみたいに…。


「名月さん、大丈夫ですか…?」


私の足が小刻みに震えていた。


「…怖かったです…」


「名月さんが無事で良かった…何かあったら、俺は…」


その瞬間、私は彼に優しく抱き締められた…。


その温もりは、とても心地良くて…。


『やっぱり、あなたが好き…』と心の中で呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る