第12章

第16話

大樹は、頭を抱えながら、会社の駐車場へ車を止めた。


その表情は、複雑そのものだ。


こんな経験は、今までにない。


『…どうしよう…。これから、仕事なのに…』


大樹が一人悩んでいると、後ろからよく知る友人、雪見 北斗の声がした。


「社長、おはようございます。朝から百面相なんかして、どうしたんです?」


「いや…その…」


僕は、北斗の問いに言葉を濁した。


「その反応…さては、秋映さんと何かあったな」


「……」


『やっぱりな…』


北斗は、やれやれと言う表情で、やや呆れ気味だ。


「…その、皆が退社した後、最後の見回りをしていたら…資料室に秋映さんが居たんだ…」


大樹が、ぽつりと話し始める。


「それで?」


「…ずっと、資料を読んで勉強していたらしい…ノートには品種や、特徴、新しい商品案も書いてあってね…」


「へぇ〜っ!彼女、努力家なんだね」


「うん。それで、疲れたんだろうね…その場で眠っていて…頑張ってる彼女がもっと、愛おしく思えて、寝顔にキス…したんだ…」



北斗は、大樹の衝撃の一言に愕然とした。



「はぁ!?キス!?しかも、寝顔に!?」


「あぁ…」


「お前、中学生の男子か!?今まで彼女居た事ないのを不思議に思ってたが…そう言う事か…」


『お前の恋は、始まったばかりだよ…頑張れ、大樹』


北斗は、そっと、二人の恋を見守る事にした…。

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