第9章

第11話

「早速、社内を案内させて頂きますね!」


「宜しくお願いします!」


社内は、清潔感溢れ、明るく過ごしやすそうな空間が広がっていた。


「こちらが私達、総務課のフロアです!」


フロア内に入ると、和やかな雰囲気で私を迎えてくれた。


「こんにちは!」


大勢の社員の人達がこちらを見ている…。


「こんにちは…!私、本日入社しました、秋映 りんごと申します!宜しくお願いします!」


私は、緊張しながら挨拶をした。


「固いよ、リラックスリラックス!これから宜しくね!秋映さん!」


「はい!」


そして、私は、名月先輩に案内されながら、次々とフロアを回っていき、各部署へ挨拶を済ませていった。


「そして、次で社内フロアの紹介は終わりです。最後に、資料室です。中へどうぞ!」


扉が開くと、そこには数々の資料が保管されていた。


「この資料室には、りんごの品種や特徴を集めた本や、今まで商品化した物から没になった企画まで、全て保管してあるので、時間がある時に読んでみて下さい」


「はい!」


「それでは、今日はこれで以上です。お疲れ様でした!」


「ありがとうございました!」


私は、お辞儀をして頭を上げると、名月先輩が微笑んでいる。


『何だろう?』


私が不思議に思っていると、名月先輩の固めの態度がコロリと変わった。


「堅苦しい話は、ここでおしまい!」


「えっ?」


彼女のあまりの変わり様に、私は一瞬固まった。


「秋映さんは、りんご飴が好きでここに来たの?」


「はい…!!Jewel Appleの常連なんです」


「そうなんだぁ!じゃあ、社長とも会った事あるでしょ?」


「はい。でも…社長だって知ったのは、本当に少し前の話で…よく気が付く方だなぁとは、思っていたんですけど…」


私がそう話していると、今度は名月先輩が混乱している様な表情をしていた。


「名月先輩…?」


私が気になって、声を掛けると名月先輩はハッとした。


「ごめんね。あのね、噂で聞いてた話と違うなぁと思って…」


「噂…ですか…?」


「社長って、もっとクールでガードが固いって聞いてたから…ちょっと意外って言うか…。

私は、雪見副社長派だけど♡」


「あっ!ごめんね!私、会議があるから、資料室、自由に使ってね!」


名月先輩は、早急に資料室を後にした。



『それにしても…今度は、私の頭がおかしくなりそう…』


噂話と、実際に話した時の社長のイメージが余りにも、かけ離れているから…。


ねぇ…。一体、どれが本当の紅林社長ですか…?

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