第1章

第3話

あれから、二十年の月日が経った。


私、秋映あきばえ りんごは、二十五歳になっていた…。


『白雪姫の様な恋がしたい』


そう思い描いていた恋も、未だゼロ…。


初恋の男の子にも会えていない…。


大学を卒業したものの、就職難でバイト漬け。


「全然、人生思い通りにいかない!!」


私は、頭を抱えた。


『きっと私、今疲れてる…』


そんな時、決まって行く場所がある。


最近、街中に出来た「りんご飴専門店」


『そこに行くと、元気になれる…』


そんな気がして…私は、店へ足を運んだ。


「Jewel Apple」


オシャレな看板と白い清潔感のある佇まいが私を出迎える。


私にとって、ここは特別な空間。


幸せな時間が始まる。


「こんにちは〜」


「いらっしゃいませ!あっ、いつもご来店ありがとうございます!」


聞こえてきたのは、男性の明るく柔和な声。


そして、爽やかな笑顔が私を別世界へ誘ってくれた。


「本日は、どちらのりんご飴にしますか?」


色々な味がある…けれど、疲れている時に食べたくなるのは、やっぱり…


「今日は、王道のプレーンでお願いします…」


「畏まりました!…あの、何だか今日は、お疲れですか?」


店員の言葉に私は、ピクリと反応した。


「…わかっちゃいますか…?」


自分でも驚く程、弱々しい声が出てしまった。


「えぇ…元気なさそうでしたから…。」


「私、大学卒業したんですけど…就職難で就活も失敗したんです…それで、今はバイト漬けの日々…。このままじゃ良くないのも分かってるんですけど、上手くいかなくて…」


「そんな時に食べたくなるのが、ここのりんご飴なんです…元気になれるから…」


暫くの沈黙が流れた。


『どうして、お店の人にこんな事言ってるんだろう…?』


そう思っていると、店員の彼が口を開いた。


「…私が、この会社を立ち上げたのは、小学生の頃の記憶が切っ掛けなんです」


えっ?そんな前から…?


思わず俯いていた顔が上がる。


「迷子になって、泣いていた女の子にりんご飴を渡したら笑顔になってくれたんです…それがずっと忘れられなくて…」


気付くと、私の目から一筋の涙が溢れた。


「…あの時は、ありがとう…ございました…」


「えっ…?」


彼は、驚いた表情をしていた。


「その女の子…私なんです…あの時、きちんとお礼を言えていなかったから…」


それは、運命的な再会だった。


「私、秋映あきばえ りんごです」


「僕は、紅林くればやし 大樹だいきです」


私の初恋の人は、社長になっていました。


ここから、私の人生が変わりだす…。

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