序章〜りんご飴の王子様〜

第2話

幼少期の頃、私は両親と一緒に、夏祭りに来ていた。


「パパ!ママ!楽しいね!!」


「あれっ?パパ!?ママ!?何処!?」


「ふっ、うっ…うわぁぁ〜ん!!」


迷子になって、私は泣いた。


そんな時、泣いている私に声を掛けてくれた男の子。


「大丈夫?お父さんとお母さんと、はぐれたの?」


私は、こくんと頷いた。


「泣かないで…これ、あげる!!」


その子は手品の様に、りんご飴を差し出してくれた。


「わぁ!赤い宝石みたい!なぁに?コレ…?」


「やっと笑ってくれた。コレは、りんご飴だよ!」


「りんご?私と同じ名前だ!コレ、食べられるんだね〜!」


私は、瞳を輝かせた。


「食べてみて!美味しいよ!」


太陽の様に眩しい笑顔の男の子に勧められるまま、私はりんご飴を一口齧った。


「美味し〜い!!私、コレ好き!」


「良かった。僕も、一緒にお父さんとお母さんを探すよ、だから大丈夫」


安心感をくれる不思議な子…。


彼がそう言うと、本当に大丈夫な気がして…。


「りんご〜!!何処に居るの〜!!」


「りんご!!居たら返事をしてくれ!!」


パパとママの声がした。


それから私は、無事にパパとママに会えた。


「良かったね」


男の子は、穏やかな微笑みを私にくれた。


「ありがとう!!」


でも、幼かった私は、彼の名前を聞きそびれてしまった。


『りんご飴をくれた彼は、今も何処かで元気にしているのかな…。』


それは、私の初恋だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る