第34話

それから数分して、ようやくライジルが食堂に入ってきた。



「ライジル、来たね」



「ああ」



ライジルは風呂上がりのままここに来たようで、いつも立っている髪が額に張り付いている。

前髪があるので、何だか幼く見える。


首元には白いバスタオルが掛けられていた。



オロロンの隣に座るのと同時に、ウィルの魔法で料理が宙を滑って目の前に現れた。



「橋の建設、終わったの?」



「ああ。何とかパレードには間に合った」



リックの問い掛けにそう答える。



橋の建設はパレードの為に行われたものらしい。


ライジルは数日しか行っていないが、大規模な工事だったようだ。



「お疲れ様、ライジル」



「ああ。……お前もな」



ライジルが一番疲れているはずなのに、気遣う事を忘れない。


しかめっ面の中にライジルの優しさを感じ、燈は微笑んだ。




「んだよ……。葉っぱしかねぇじゃねぇか」



料理を見てのライジルの感想は予想通りだった。



「うるさいわよライジルー!野菜は栄養があって身体にいいんだよーだ!」



「俺には肉の方が栄養があんだよ!」



やはりこの二人は顔を合わせるとすぐに喧嘩を始めてしまう。


きっとどう言っても二人の仲が良くなる事は無いのだろう。



はぁ、と溜め息を吐いたライジルだったが、料理をしっかりと見た瞬間、ピタリと動きを止めた。

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