第27話

「田上先生呼んできた!」





愛里が息を切らしながら教室に入ってきた。





「御影くん大丈夫?!」


「うん、一回殴られてしまったけど…」




そこで学年指導の田上先生がやってきて大きな声で喝を入れる。





「おい!男子なにやってる!!」




「やべっ!田上だ!!」


「逃げようぜ」






慌てた男子達は、何事もなかった様子でそそくさと教室を出て行った。

田上先生も問題ばかりの常習犯である彼らを見てどちらが悪かったのか、簡単に見当もついたのだろう。眉間に皺を寄せながら後を追う。



「待て!!またお前らか!今度ばかりは徹底的に話すぞ!!」




だんだんと廊下の向こう側へと遠のいていく怒号にホッとしつつ御影了に目をやると、直ぐに女子達が取り巻いていた。






「御影くん大丈夫?」



「あたし、絆創膏持ってるよ」



みんなここぞとばかりに女をアピールしているのが良くわかる。

わたしはそんな彼女らの企みになんだか少し不信感を感じた。別に御影了の事がどうとかじゃない。ただ、算段のある思いやりなんておかしいと思ったから。

でも、それを言葉で言える勇気なんてない。

情けないけどそれが今のわたしだ。



そんな様子を見ていると、そのうちの1人の女子が御影了の腕を取り、心配そうな顔付きで話しかける。



「保健室行こう。わたし、案内するから」



上目遣いにやけに甘ったるい声。

今、保健の先生は授業中だから、きっと保健室には誰もいない。

この子は一体何を期待しているのだろう。

わたしは彼女が本当に御影了の事を想っているようには見えなかった。




「ねぇ、御影くん。そうしよ」




御影了はその彼女に一瞥くれると、ため息ひとつつき、



「いらねぇ」




と、絡んだ腕を振り解きバッグを持って「俺、怪我で早退するわ」と、教室を出て行ってしまった。






「なっ、なによ!せっかく心配してあげたのに…!」



バツの悪さに顔を真っ赤にして怒る女子は、さっさと自分の席についてスマホをいじり始めた。

それを見た他の女子達は、どこか嬉しそうにほくそ笑む。



この人達、自分の事ばかり。



こうゆうのは見ていて気分がいいものではない。

でも、ここでそれを訴えるのはクラスメイトとして賢明ではないことは分かっていた。



わたしは視線を愛里に戻し、残っていたお弁当を食べることにした。

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