第25話

御影了はそんなやっかみもいちいち相手にはしていなかった。それが一部の男子の気に障ったようで、取り巻いていた女子達を押しのけて代わりに2、3人の男子が取り囲む。普段からあまり素行の良くないグループだ。






「なぁ、御影クンよぉ」



「…」




「モテる秘訣教えてほしーなー」


「…」




御影了は一切問いには答えず、変わらず窓の外を眺めている。そのすました態度が気に食わなかったのだろう。グループのリーダー格の男子がくってかかる。



「なんだよ。無視か?」



「…」




「おい、仲良くしようとしてやってんだろ!」




それでも御影了は顔色ひとつ変えず、視線も窓の外を眺めたまま。





「こっちが下手に出てりゃぁいい気になりやがって」




教室内に不穏な空気が広がってゆく。

他の男子は、自分に火の粉が飛ばないよう見て見ぬふりの姿勢を保つ。

「ねぇ、なんかヤバくない?」とさすがの愛里も心配そうに御影了を見つめる。

確かに、もう男子達は御影了にいつ手が出てもおかしくない勢いだ。




「あたし、学年指導の先生呼んでこようか?」




愛里がこそっと機転を利かせてそう言ってくれたから、わたしは頷いた。

グループにバレないように、ゆっくり教室を出ていく愛里を見送る。







「なあ、喋れねーのかよ!おい!」




そこで、御影ファンの女子達が勇気を振り絞って声を上げる。



「ね、ねぇ、やめなよ」


「そうよ、御影くん何もしてないじゃない」




「うるせぇ!!」




強い語気で一蹴され、女子達はたじろいで一歩ずつ後ろに下がる。

すると、御影了は立ち上がり口を開いた。




「やめろ」


「あぁ?!」



とうとうリーダーの男子が御影了の胸ぐらを掴む。



「知りたいんだろ?モテる秘訣」



御影了は冷たい眼差しで相手の男子を一瞥すると、こう答えた。





「顔。残念だったな。いい男じゃなくて」

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