第23話

「今日からうちのクラスの仲間になる御影了(みかげりょう)君だ」



「御影です。よろしく」



ニコリともしないなんとも無愛想な挨拶。

だけどそんな事、いちいち気に留める女子はいない。


「御影はご家庭の都合でA高校から来たそうだ。みんな、いろいろと教えてあげてくれ。よし、御影は窓際の1番後ろの席だ」



櫻井先生の指示で後ろの席へ移動する御影了。

まさか、この学校の生徒だなんて思わなかった。 

しかも、同じクラスなんて…。

でも、よくよく考えてみると図書室にいた時、うちの学校の制服を着ていた。なんで気付かなかったのだろう。






そんな彼の様子をまじまじと見ていると…



御影了がわたしの方をギロリと見てきて、咄嗟に顔を伏せる。

図書室の女だと悟られてしまっただろうか-------



もう1度目だけチラリと窓際に目をやると、御影了はもうこちらを気にしてはいなかった。



わたしだと、分かっていないのかもしれない。

それならそれに越した事はない。

これから同じクラスでやっていくのだ。特別仲良くなろうとは思わないけど、気まずいのはごめんだ。


でも、そこである事に気づく。





何だか顔色が悪く苦しそう--------?



どうしたんだろう?



彼は席に座ると足を組み、窓の外をじっと見つめていた。





「それともうひとつ。崎本、かばん忘れるなんてどうゆうことだ?御影が見つけて届けてくれたぞ」



「え!あ、すみません…」


「おい崎本、なにやってんだよー」とお調子者の男子につっこまれながら、恥ずかしい思いでかばんを受け取った。


クスクスと笑われけど、それでもそんな恥じらいですらもすぐに忘れてしまう程、何故か御影了の事が気になってしまう。



少しだけ開いた窓の隙間から冷たい風が吹き込み、彼の長い前髪を揺らしていた。

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