第14話
すると…
あれ?扉が開いてる…
朝早く行くと必ずいつも閉まっているのに。
誰かいるのだろうか。
不思議に思いながら電気も付いていない図書室に1歩足を踏み入れた時----------
ズキっ!
「ゔっ…」
右足に鋭く重い痛みが走った。
ただ一瞬だったので、また嵐のせいだとそれほど気にも留めなかった。
それよりも、わたしの中に少し残念な気持ちが漂う。
誰もいない図書室。
この解放感に浸りながら朝礼までゆっくり本の中の世界にダイブしようと思ってたのに。
また痛むようなら保健室の先生が来るまで、ここで休もう。
わたしはとりあえず、図書室の椅子に座ろうと右足を引きずりながら進んでいった。
すると---------
「誰にも言うな」
何故だかわからない。
声が聞こえて咄嗟に本棚に隠れるようにして身を屈めたのは。
人がいる。でも、その男の声色は聞き覚えがない。
「秘密を守らなければ、悲しみが戻るだけ。いいな」
「わかっています。絶対、口外したりしません」
そして、その言葉に応える女性の声。
身を潜めつつそっと覗いてみると、そこには3年生の水橋ユカ先輩。
水橋先輩といえば、学校一の美人で有名な人だ。文化祭で行われたミスコンでもグランプリを獲っていたし、他校からも男子が見に来るほど。
ただ、クラスメイトの愛里(えり)から聞いた話では、中学の時から付き合っていた彼氏と最近別れたとか。
何してるんだろう。
「怖いか?」
男の方は、スラッとした体格に黒い髪。
その顔は…ちょうどわたしからは後ろ向きになっていて見えない。
水橋先輩が、少し声を震わせるようにして応える。
「いいえ。もう、すべて、忘れたいの。あんな男のことなんて何もかも」
「アンタの大事なモン貰うけど、本当にいいんだな?」
「ええ。この痛みを早く流して!」
すると、男は水橋先輩にゆっくりと近づくとその腰を抱き寄せる。
「交渉成立だな」
男はもう片方の手を水橋先輩の両目の上を隠すように翳すと、
「契約の元。始めるぞ」
身体をグッと引き寄せ、その唇にキスをした。
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