第10話
家を出ると、ヒューヒューと風が踊るようにして私の髪をかきあげた。
空を見上げてみる。
重く、暗い。今にも雲が落ちてきそうな曇天。
嵐がやってくる----------
そんなことを容易く予期させるくらいの天候だったけど、私は迷わず学校へと向かう。
ズキッ-------
こんな日は、古傷が疼く。
私は中学生の時、バレーボールのエースアタッカーだった。
全国を賭けた最終戦。
必死でボールを追いかけて追いかけて、打った。
試合はフルセットに持ち込み、相手チームとは1点差の接戦。
あと5点、あと4点…
その時-------!
無理な体勢なのは分かっていた。
でもどうしてもその1点が欲しくて-------
私は着地に失敗し、足を痛めてしまった。
無理に立とうとしても、到底立つことは出来ず。
試合は一時中断。
「たぶん、骨が折れているわ。今すぐ病院へ行って下さい」
医務の人にそう言われたけど、私は聞かなかった。
「大丈夫です!!今ここから離れるわけにはいかない!!!」
「何言ってるの?!こんな状態で試合に出れるわけないでしょ!!今ちゃんと治療しないと、先々どうなるかわからないわよ!!」
泣きながら懇願するも虚しく、私は副顧問の車で病院に行く事に決まった。
「…みんな…ごめん…」
弱々しく零れた言葉に誰も反応するチームメイトはいなかった。士気は落ち、不穏な空気感。
みんな、敗北を予期しているかのようだった。
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