第9話

「あれー、おねーちゃんはー?」



「寝てる」



「は?マジで?」



「ああ、よく寝てるよ」




そんな会話を幸江ちゃんと交わしながら、



朝食の準備が出来ているダイニングテーブルに座る。




「おねーちゃんの寝不足、多分、アタシが原因だー」



化粧をする手を止めて、




臣くん、ゴメンねー、




と、謝る幸江ちゃん。





「別に大丈夫だよ。それより、今日、帰るんだって?」



「うんー。入学式も近いしー、まぁ、ちょっとは気分転換になったしー」




そんな幸江ちゃんの言葉に、そう言えば愚痴がどうの言っていたな、



と、



思い出す。





―…その愚痴がどんなものか、大体の想像はつく。



つくづく、似た姉妹だな。





「ねぇ、臣くーん」



「何?」



「おねーちゃんのこと好きー?」



「……いきなりの質問だね」



「いーじゃん。答えてよー」



「まぁ、」



「まぁ?」



「―…好きでもない女と籍を入れて、同じ屋根の下に住むなんてこと俺はしない」



「臣くんらしい答えー」



「それはどうも」





そんなやりとりをすると、



幸江ちゃんは口元を微かに緩ませて、




化粧道具を手に、また鏡を覗き込む。






何だかんだで、



この姉妹は、仲が良い。

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