不幸な男たち

喫茶店に三人の男が入ってきた。三人はコーヒーを注文した。

一人の男が話し始めた。

「まったく、僕は何て不幸なんだ。婚約者に浮気され、足を骨折し、先ほど財布を盗まれた。僕ほど不幸なやつが他にいるだろうか」

二人目は言った。

「はあ。君が不幸なら僕の方はなんだというのか。10年も勤めた会社をクビにされ、家は火事、一文なしだ。僕が君だったらといつも思うよ」

三人目は言った。

「こんなことを聞かされる僕が一番不幸じゃないのか」

見かねた喫茶店のマスターがコーヒーを持ってきて言った。

「まあまあ。景気の悪い話はよしなさい。よし、そうだ。このコーヒーをただにしてあげよう。どうだね、いいこともあるだろう」

三人は口々にお礼を言ってコーヒーを飲み、喫茶店を出た。

「「「簡単なものだな」」」

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