第70話
悠たちのクラスは混乱していた。
ストックが来たか、と思いきや何故か悠と翔まで一緒に運ばれてきたからだ。一番運ばれてはいけない商品が運ばれてきたようなものである。
「おい・・・なんで神乃宮までデリバリーしてくるんだよ!!」
そう叫んだのは言わずともわかるであろう、隆斗だった。
翔ちゃんと一緒に居るから、なんかつっこみ上手くなってるしなんなら翔ちゃんよりも面白いこと言うようになっちゃったよ・・・と一人場違いなことを考えている悠である
「だったずっと缶詰めだったし、そもそも噂かなり広がってるならもう行くか!と思って」
「・・・俺は何も知らねーからな。」
『こいつの面倒見れるのはお前だけだろ!!!』
と最終的にそこにいたクラスメイト達に言われたわけだけど・・・
「あのうわさ・・・ほんとうだったの・・・?」
「名字も変わってるわ・・・・もしかしてこのクッキー全部本当に手作りなの?」
「本当に男子校にいるなんて・・・・」
女子高の生徒は嫌悪を抱くことよりも驚きの方が強くと未だに責められ続け・・・否、絡まれるづけている悠を凝視している。
「・・・改めて神乃宮悠。えっとこういう場合は久しぶりと言った方がいいの、か?ここにいる女子高の子たち殆ど知り合いなんだよねー・・・ってぐふっ!」
女子高の生徒たちの声と視線に気が付き近づきそう言い手を振ると、なぜか勢いよく抱きしめられた。あ、あれ?なんか可笑しいんだけど!?
「・・・悠ちゃんはすごい女子高でも人気があったの。表立って何も言われてないけど裏ではすごかったんだぁ・・・」
と、翔と隆斗が戸惑う中春香はそう言って微笑んでいた。
わちゃわちゃとした雰囲気の中、扉を開けて入ってきた人物を見て、女子高の生徒たちがおびえ始めた。その人物は、ジーンである。
「さきほどからこの方が来るたびに機械が鳴るんです。」
「あまりにも高い音が鳴るので仕方なくここでは機械を切っています。でもとても不気味で・・・」
「窓の外を睨んだり、何もない空間にお菓子をあげているのを見てしまって!」
いや、普通に何してるのジーン!?それじゃあ疑ってくださいって言ってるようなものじゃ・・・
「・・・ぇ」
〝どうやら魔王が大変みたいなんだ。そろそろ戻らないと〝
悠はその声を聴いてジーンに詰め寄ろうとした。しかしその時にはすでに人間の姿から悪魔の姿へと変わっていた。
上級になると悪魔の姿になったとしても人間の姿を認識した者であれば悪魔の姿も認識できてしまうようになっている。
「き・・・きゃぁぁぁああ!!」
「悪魔・・悪魔よ!!機械は間違っていなかったのねっ!」
「ひっ・・・ここないでぇぇ!!」
初めて見る悪魔の姿にその場は大混乱に陥った。女子高の生徒たちが機械のスイッチを付けると鳴り響く機械音。勿論、音は最大である。
「・・・・やっぱりばれちゃったみたい」
ジーンはそう言って私の方を見てニコリと笑った。バレたのではなく、わざとバラしたのだ。ジーンは男子校の心地よさに驚いていた。しかしいつかは捨てなければならないこともわかっていた。そんな時に、中級よりの下級悪魔が魔王の危機を知らせに来たのだった。
「・・・ジーン・・・」
「悪魔がなんで!?」
「・・・・隆斗」
「・・・やっぱり僕は悪魔なんだよ・・・・少し人間との距離が近くて調子に乗りすぎちゃったかな」
さみしそうな表情のジーンを見て悠は心の底から後悔した。
ジーンは元々他の中級以上の悪魔達と違い人間に対して一線を引き中立の立場にいた悪魔だった。
珍しく悪魔らしくない言動で悠が魔界にいた頃、ジーンの名前を出すたびに嫌味、僻みを言われていた。悠はそのことを知らないが、再び魔界に行きジーンを連れ帰ったことで知ったのだ。自分と境遇が似ていることを。
それだけじゃないけど、ジーンはこっち側にいた方がいいと思った。だけど人間側のことを甘く見すぎていた…
私はそんな顔をさせるためにここにジーンを連れてきたわけじゃなかったのに
「ジーンっ!」
ジーンは既に直接窓をゲートにし、魔界に戻ろうとしていた。
「もう少しだけ居たかったんだけどな・・」
「待って・・・」
行かないでよ・・・
またわたしをひとりにするの
「あいつは悪魔なんだろ!?だったら「お前らには分からない。・・・私には家族なんだよ・・・知らないくせに」
悠は感情的になるのを必死に抑え淡々を言いながらジーンを見つめる。その表情は、幼いころ翔が学園に帰るときに見せたそれに似ていた。
知る訳ない。当たり前だただ八つ当たりをしてるだけ・・・どうしていつもこうなるのかな
「そう・・・す・よ・・・悪魔・・悪魔・・!悪魔にいいとかないんですよ!」
私のせいだ。やっぱり連れてきてはダメだった
こうなる事予想はついたはずなのに。ああ・・私は弱くなった
あいつがあの時言われたことは本当だ。私は弱い・・・弱すぎ
「今度こそサヨナラだね。悠」
「さよなら。じゃなくて行ってきます。の間違いでしょ。」
どうせ引き留めても行ってしまう。・・・ジーンは特に魔王に関しては過保護なところがあるから。違うか。私が引き留めたらダメなんだ。
「・・・そう、そうだね悠。あまり翔に迷惑をかけてはだめだよ。行ってくるね」
悠は一度も振り向かないジーンの背中を見送るしかできなかった。
否、悠はジーンを追いかけようとしたが翔に手を掴まれ前に進むことが出来なかったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます