第69話
「今から交流会の流れを説明する。また理事長から話が合った通りここからは生徒会が主催となって進行して行くからな。」
現在、制服姿の女子高の生徒たちが集会場に集まり今後の流れについて説明している真っ最中である。
悠は女子高の生徒達の内情を考慮しなるべく顔を出さない方向で決まっている為舞台上には居ない。
尚、悠は夜中まで準備に追われていたため寝不足だったこともあり集会場の準備中は立ったまま寝ていたのだが、本人がそれに気が付いたのは翔が交流会の流れを説明し始めたあたりだった。
つまり前後の記憶が全くないってことなんだよね!!
まぁ、なんで起きたかは舞台の袖から見てはっきりしたよね!
「改めて、あー・・・生徒会長の呉牙翔だ」
『きゃー!翔様!』
悠が起きた原因は翔たち生徒会に向けた黄色い悲鳴だ。女子高の生徒たちの甲高い最早悲鳴は、収まることを知らない。
それにしても・・・
「翔・・・翔さまって・・・」
笑ってはいけない・・・笑っては・・・・って無理!!
悠はその光景を見ながら舞台袖で声を押し殺しながら笑い続けていた。
「小邑有悸ですぅ。よろしくねぇ」
『ゆきちゃんかわいいー!』
「・・・來田村伶」
『伶さまクール!』
各々の生徒会のあいさつと共に黄色い悲鳴・・・はまだ分かる。
だけど他のその返事可笑しくない!?絶対に何かおかしいよね!?伶の表情筋がいつにもまして死んでるし・・・!
『神宮寺新だよ。彼女になりたい子は後で僕の所に来てくれたらうれしいな~』
『分かりました!神宮寺さまー!』
・・・てか間違いなく有稀と新楽しんでるな!!
順番にあいさつを終えた翔は引きつった笑みを浮かべ、伶に至っては魂が抜けているのではないだろうかと思うほど微動だにせず虚ろな表情をしている。それに引き換え有稀と新はニコニコと笑顔を浮かべ余裕の表情で手まで振り返している。
「あー・・・あと一人生徒会に入った転入生がいるんだが別の業務に追われている他ここでの挨拶は割愛する。」
「これからぁちゃんと説明会らしくぅ説明するよぉ!」
自分たちでこれ説明会じゃないって気づいてたのかよ!後翔ちゃん!何さらっともう一人生徒会に属してる奴いるとか言っちゃってる訳!?
「手元に学園内のマップがあると思うが、今回はそれを見ながら各々周ることになるからな。それから、今回は学部や学年ごとに様々な手作りのお菓子が配布される。持ち帰ることもできるからあとから配る籠を持っていくようにしてくれ。籠の中にお菓子やクラスの装飾等がまとめられている為それを参考しにしてくれ。何かわからなければ男子校の生徒達に聞いてやって欲しい。以上だ」
こうして、悪魔が来ることなく穏やかに交流会が始まった。
「悠。お菓子作りはもうやるんじゃねーぞ!飲み物のストックだけ転移だからな!!」
「ちょっとあまりにも働かせすぎじゃないか!?私調理室に缶詰めなんだけど!!!てかそのストック私たちのクラスなんだから持っていけると思うんだけど。」
戦うより辛いなんて予想外だったんだけど!!
初めは穏やかかに行っていたが、とある問題が起きていた。それは、悪魔感知の機械が高等部、つまり悠たちのクラスのみ作動することだった。
機械を切ることはできるが見えない相手がどこかに潜んでいるとわかっている以上強制的に切らせることはできない。
翔はさらに荒ぶる悠の面倒も見なければならず、自分自身の体力も限界を迎えつつあった。
「俺だって働いてんだよ・・・ジーンがいるだろ?機械が止まねーんだよ!今戻ってみろ?あいつらににらまれるだろーが!」
まぁ、翔ちゃんが言いたいことはつまりこれなんだよね。
初めから心の声が聞こえていた悠は機械に悩まされていることを知っていた。しかし顔を出さないと方針が決まったためどうにもできなかったのだ。
「翔ちゃん余ってるクッキーあげる」
有無も言わさず悠は翔の口の中にクッキーを放り込む。サクサクと食べる音がし、やがて翔は大きな、それは大きなため息をついた。
「お前、悠の噂も女子高全体に伝わってるみてーなんだよな・・・」
「そりゃ目の前でいろいろやったから・・・まって?だったら私ここに居なくても堂々とクラスに居てもよくない?春香だって居る訳だし」
「・・・あ」
こんな会話をした後、最後のストックを各教室に転移させ悠と翔はストックを持ちそのままどこかへと転移した。
ひらりと一枚の紙を残して
『勝手に持って行け!』
つまりは、二人とも既に限界だったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます