第67話

「お前、弱くなったですね」

「は?」

てかこいつは一体私の何を知っているんだよ!ってそんなことよりも。

「新たな魔王の命令、ってどういうこと?」

「・・・時期にわかることです。そしてお前がここで死「うるさい。」

悠は落ちた際に聖杯が元に戻っているため、仕方なく拳で悪魔を地面へとめり込ませる。

その際悠は〝なんか、また間違いなく何かに巻き込まれてるやつだよなこれ・・・〝とげんなりしていたことは触れずに措こう。

「さすが最恐最悪の女と言ったところですか?」

「そんなことどうでもいいって!・・・まためんどくさいことしてくれちゃってさ」

「何がですか?」


顔面殴っていいかな!?


地面へめり込んだまま悪魔には悠の表情は勿論見えてはいない。だが、悠は今にも頭を抱えそうな程その表情は困惑と怒りが混在している。

そう、思い出しても見てほしいものだ。この悪魔は自身が何をしたのか全く分かっていないのだ。それどころか表情を見ずともその言葉と声色で大体想像がつくだろう。

怒りとか通り越してあきれるってこういうことを言うんだろうな・・・後怒らせちゃいけない人も起こされてるし。翔ちゃん死ぬほど怒り心頭みたいだけど手のひらで来るなって合図しておいたから近づいてこないんだけど

それにしても・・・本当に血を流しすぎた

「・・・そろそろ悪魔が来るぞ。もう気配もしてる。数も今までで一番多い、かな。聖杯召喚。」

胸元からまばゆいほどの光が溢れダイヤの様な形へと変わり服の上に現れる。それに手を近づければ空間から柄が現れぎゅっと握り素早く抜き出せばレイピアに似た細身の刀身に複雑な装飾が付いた柄が一瞬光り、弾ける。それと同時に迫ってきた悪魔が消滅する。

「なんのは・・・・・な!?なぜ悪魔が!?」

「一応言っておくと、お前も悪魔だからな!?」

悪魔と話をしている際にも悠は次々とどこからともなく湧くように悪魔が溢れかえるのを斬撃で一掃する。

どうやら私の体質は知らないみたいだけど・・・悪魔が来たことに悪魔が驚いてどうするんだよ!

そう心の中でツッコミを入れている間にもまるで一つの生き物になったかのように増え続ける。


これはギリギリまで引きつけて一掃するしかないな。タイミング間違えば周りの人たちにも被害が及ぶし。

ま、それは翔ちゃんたちが何とかしてくれるでしょ。


「旋律せよ。この身に纏い白と黒の幻影。我が武器となせ。」

まるで音の集まりのように黒と白の光が体があふれ出しレイピアに似た細身の刀身へと吸収されていく。本来の形から姿を変えたそれを構える。

光に反射するレイピアの色は鈍色となり、装飾は一度すべて剥がれ落ち新たに構築された薄いガラスでできたような四角形の中に禍々しい揺らめく炎の様な黒い光が展開されている。

「闇夜に響き飲まれ無となれ、炎黒響律ーえんこくきょうりつー」

展開されているそれを全て自身の剣で砕くように切り終わると、黒い炎がまるで響くように凄まじい速さで拡散され白い光がそれを乗っ取るようにして小さな爆発が繰り返される。

悠は爆発が繰り返されていることを確認するともう戦う必要はないといわんばかりに聖杯の具現化を解いた。

未だ手ではなくいつの間にか足に切り替えられ頭を踏みつけられている悪魔は手から足へと切り替えるさえに咄嗟に顔を横に向け視界を確保し小さな爆発を感心したように見ている。


・・・それにしても本当にこの悪魔に覚えがないんだよね。中級から上は全員把握してるはずなんだけど見た目は何となく知ってる気もするけどこんな話し方とかしなかったはずなんだよね

「・・・本当に見事な輝きです。お前が欲しくなるのもうなずける」

「悪魔であるおまえにも攻撃あたってそそこら中ボロボロになってるけど?あと欲しいっていったい誰がそんなこと」

「ふ。・・・・お前可哀相ですね」

「はぁ?自分のことじゃなくて?」

「とんでもないことに巻き込まれることになりますよ?・・・・せいぜい頑張れです」

そういうとその悪魔は悠の言葉を無視したまま瞬時に地面にゲートを開き悠の目の前から消えた。

初めの攻撃で悠の体に突き刺さった剣は灰になりわずかに残った破片が落ちる。刺された傷跡は、もうどこにも見当たらなかった。


悠はそのまま、その場から動くことはなくただどこか遠くを眺めていた。


小さな爆発が収まり悠の意識が現実に向いた時には翔たちが避難誘導してくれていたのか既に一般人は見当たらなかった。

その代わり、周りには後から応援に駆け付けたであろう見慣れないものも含む男子校の者がせっせと復旧作業に追われていた。

現在、悠の力を借りることなく着々と修復作業が行われている。

しかし、それどころではなかったものが一人・・・そう、この惨事を引き起こした悪魔と闘った悠である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る