第14話

ここに立っている理由を回想してみたけどただただ今の状況になるまでを整理しただけになった…。


目の間に広がるのは同じ制服を着た男達の列。実戦場で見た男達も確認することが出来たが、人数の規模が違う。SSクラスの人数は50名ほど。学年が上がるたび増減する為正確な人数を把握するのは難しい。中等部高等部合わせ6クラス分、約300人がホールに集まっている事になる。


今いる場所は本部棟にある集会場だ。

集会場は本部棟の一階と二階の間の1.5階部分に存在する。しかし、集会場が本部棟と独立している為、本部棟の1.5階は四方八方に伸びる通路しかない。集会場に行く方法は一つしかない通路を渡ることだ。帰りのみ一方通行で各クラスに続く通路が開く仕組みになっている。

集会場の中は二階建てになっており、5000人が入りきるほど大規模な会場になっている。一階は広々としたフラットな会場になっており、二階はバルコニーとなっている。舞台入口から見て正面にあり、SSのクラス1つ分の人数が余裕で入るほどの広さとなっている。

舞台両端に階段は無く、舞台上に行くには二階バルコニーから両端の先にある扉のみ入ることが出来、他にはない造りとなっている。

舞台こんなに広くする必要あったのか?と思うほど広いんだよな…。そして相変わらず視線が痛い。


短く溜息息を付き、本人でも分かる程虚ろな目をしながらもなるべく舞台下にいる男達を目を合わせまいと上、二階バルコニーをぼんやりと眺める。が、一定を見るには限界がある。視線だけを動かしていると二階バルコニー両側にいる翔と目が合う。

なんか口パクパク開けてる。酸欠起こした魚みたいになってるんだけど。

クリーム色の長い髪の男と薄桜色の髪の短い男は翔の周りで笑い、からかっているように見える。マッシュルーム型の短い髪の男は気に留めることもせず時々首を動かし、周りの状況を伺い警戒している。


『何でもいいから話せ!進まねーだろ!』


耳の裏に付けていた機械から翔の声が聞こえた。

そう言えば舞台に立つ前に翔ちゃんから機械渡されたんだっけ…。

理事長が新たに試作で開発した機械。透明なもので作られたそれは、耳の裏に張りつけれるようになっており管の様なものが顎のラインに沿り口の近くに来るように設計されている。同じものを翔達も付けておりその機械を付ける事により遠くにいる者達との会話を可能にした機械だ。

『後、酸欠起こしてねーからな!』

聞えてたんかい!!てかいつの間に口に出してたんだ私!…もしかしてさっき翔ちゃんからかってたのってこう言う事か!?と、翔達がいる方向から殺気と共に何かが飛んで来る。何かは右頬を掠り、遅れて右頬に痛みが走る。とっさにそれを掴かむ。・・・理事長に怪我をした所治してもらったばっかりなんだけどな。

掴んだそれを見ると、聖杯によって作り出された小さな釘の様なものだった。耳元では翔とそれを作り出し傷を負わせたであろうマッシュルーム型の短い髪の男が話している声が聞こえていた。

『おい。何やってんだ』

『これ以上あの女を舞台に立たせる理由が無い。血でおびき寄せれるなら血を出させればいいだろう』

『だからと言って故意に傷を付けるのは違うだろ!』

『・・・俺がやらずとも外にいるあれがやっていた』

傷から血が静かに流れる。舞台上に上がっている女がいきなり頬から少量の血を流し何かを掴みとった光景を見ていた男たちは先ほどとは違う意味でざわつき始める。

翔とマッシュルーム型の短い髪の男の会話を聞く前。釘の様なものが飛んでくる前から視線は二階バルコニー後ろにある全面ガラス張りになっている方へと移っていた。

・・・きっとあの女嫌いは悪魔を察知する能力に長けているんだろうな。翔ちゃんが私に向かって口をパクパクさせている時からこっちに悪魔が近づいているのは感じていたけどその後直ぐにそれを感じ取ったんだろうな、あの女嫌い。

丸形のものを指でつかみ、ガラスに向かって投げる。

「旋回。ガラスに軌道修正。そのままこちらへ戻れ。」

釘の様なものを掌の中ですぐさま自分の力に書き換え形状変化を加え旋回できるように丸く薄い形状にし勢いをつけて投げると回転しながら反時計回りに周り窓ガラスを破壊していく。凄まじい音共に割れたガラスの破片は一階へと勢いよく降り注ぐ、がその破片はピタッと空中で止まり集会場の外にいた悪魔達に向かって飛んでいく。

「物質変化。聖杯エンチャント」

悲鳴に似た音を出し、悪魔達が消滅していくが血におびき寄せられた悪魔達は増え、集会場は一気に悪魔の巣のごとく蔓延する。その場にいた男たちは直ぐに聖杯を召喚し、応戦に入る。

あー・・・多分殆どの奴ら殆ど状況が分からないけどとりあえず悪魔が出て来た!って戦ってるんだろうな。

何故エンチャントすることなく他の物に作られた物体が動いたのか。

マッシュルーム型の短い髪の男が放った物は、勿論聖杯で生成されたものだ。殆どの者はまずやらないだろうが、聖杯で生み出された術もしくは生成された物体及び物質は自分の力に書き換えることで自らの力で操ることが出来る。

書き換えをせずに動かす事は出来るがその分力を消費する。物質や物体にもよるが、小さな物体や物質、あまり力を使わない術などは割と簡単に書き換えることが出来る。

書き換えた物質はエンチャントなどで自分の思うままにするのが一般的とされているがこまめな調節がいる場合、命令術を使うことがある。

命令術とは。命令を言葉として発し、自らが生み出した術及び聖杯で生成された物体及び物質、書き換えにより所有を自らの物を意識付けし言葉と意識したものがリンクした際に音ーこの場合言葉を声に乗せた時ーに術が宿りその通りに動く術を言う。


書き換えには、自分自身で触れるもしくは自らが生み出した術及び聖杯で生成された物体及び物質が触れている条件が必要になる。

身の安全が確保されている場合に通貨うことが多く、身の危険を常に伴う悪魔との戦いではめったに使うことが無い術だ。割れた窓ガラスが悪魔に向かっていったのもマッシュルーム型の短い髪の男の物っを書き換え命令術を使ったからだ。

二階バルコニーに居た翔ちゃん達も聖杯召喚しながら一階に飛び降りたのを見たからもう一緒に戦ってるんだろうな…

割れた窓ガラスは悪魔達が集会場に入る為の入り口となり、無限に湧き続ける。白い光と黒い塊があたりを覆い尽くし男達の声が聞こえてくる。悪魔はこちらへ血を求め向かい襲って来る、が。

「聖杯召喚!」

眩い光と共に悲鳴に似た音と共に周りに集まっていた悪魔達は消えた。

胸元がより一層光り輝きcardの形をした空間が一瞬でダイヤの様な形へと変わり服の上に現れる。それに手を入れれば空間から柄が現れぎゅっと握り素早く抜き出せばレイピアに似た細身の刀身に複雑な装飾が付いた柄が一瞬光り、弾ける。

「本当にめんどくさいな。・・・悪魔は」

毎回毎回これでもか!ってくらい懲りずに襲い掛かってくるし無限に湧いてくるし…

襲い掛かる悪魔達を退け斬撃を食らわせ消滅させていく、が。結界を修復する過程で戸惑っているのかあるいは修復する箇所が思いのほか多いのか、悪魔は減ることなく無限に湧いてくるのではと思うほど溢れかえる。

「お前の体質効きすぎる!!何でもいいからさっきみたい呼び出せねーのか!?」

悪魔の群れによって黒くなった視界の中から翔の叫びが聞こえる。

「どう何度も呼び出せるほど回復・・・してるわ」

聖杯を召喚もしくは扱う時、力の強さと容量により疲労に個人差が現れる。力が強く容量が多ければその分連続で戦うことが出来少しの休息で疲労は回復する。彼女は、疲れを知らない。それを知っているのは元幼馴染である翔だけだ。

いや、私も普通に疲れるからな!?休息なんて正直出来てないからな!?・・・まぁ、この真っ黒な視界と血のせいで強くなった悪魔達を相手にするのは遠慮したい。

高速で斬撃を与えながら、先ほど呼び出した精霊よりも強い者を呼びだす方法を考え…る事を諦めた。

適当で!思い浮かんだそれっぽいこと唱えれば何か来るだろう!

「あー・・・構築、司る元素。我が剣と力に…来たれ!」

力が吸い取られる感覚がした。


今まで感じたことのない強大な力が集合場に渦巻く。悪魔達は悲鳴に似た音すら出すことなく消滅し、辺りにいた男達はあまりにも強大な力を受け、蹲る。やっとの思いで立っているのはほんの一握りにも満たない。だが、彼女は強大な力の集合体をじっと見つめる。やがてその集合体は四つに分かれ人型となりふわりと彼女の前に現れた



なんか凄いというかヤバいの呼び出したかも…

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