第8話

静まり返る室内に響き渡る攻撃音。状況が読み込めないのか、数秒にも満たない静けさは何故か長く感じた。立ち上がり遠目に見える扉を確認すれば、先ほどよりも扉の破壊が進み一瞬たりとも時間を無駄に出来ないことが分かる。すぐさま後ろを向き

「協力して欲しい。」

言わなくても協力して欲しい所だけど!

静けさから騒音に変わり様々な言葉が耳に入る。と、二人、三人と一歩前に出る男達。教師である神楽は騒いでいる男達を諫め不安な表情で一歩前に出た男達を気にしているのか定期的に様子をうかがっている。男達は女子校で出会った四人のうちの三人だ。が、やっぱりあの時最後に来たついさっき神楽に耳打ちしてたあの男なんか気になるんだよな…。似てる、気がする。

「正直お前は悪魔側だと思っている。人間にもたまに居るからな」

「僕もそう思うよぉ!でもぉ・・・」

耳にかかるほどの長さの髪の短い男が反論し薄桜色の髪の短い男も同意するが、後ろを一瞬振り返りあきれた様子で再びこちらを見つめる。

まぁ、扱えるはずのない聖杯の力を持っていてしかも悪魔集めたままこの部屋に来たから怪さ全開なのはしょうがない。ただ、後ろの男達のまとまりの無さも心配だよな!私に言わせればこの話し合いによって時間削られることも含め今の状況全部が心配なんだけど!

「…どれも不安には変わらない」

マッシュルーム型の短い髪の男は冷たい目をこちらに向けながら言葉を放つ。強い言葉で続けて耳にかかるほどの長さの髪の男が畳みかける

「協力した方がいだろう…が。ここまで悪魔を率いてきたのはお前だろう。責任は自分で取れ」

いや聞いてた?神楽の話聞いてた?!率いて来たんじゃなくて結界に綻び生じたから…って説明したはずなんだけど。って言い返せないのはこの中でリーダーっぽい奴がどことなくあいつに似ているからなんだろうけど・・・

「本当にここまで来れたんだね~。血、かなり出てたよね。大丈夫~?」

「え?あ、うん。・・・なんで??」

急に目の前に現れたクリーム色の長い髪の男はさも当然の様に近づき話かかけてきた。余りにも違和感なく話しかけてくるから普通に会話してしまった…!!

返事をした後直ぐにクリーム色の長い髪の男だと分かり、なんでここにいる?と聞こうとした言葉は初めの三文字に凝縮された。驚くと人って直球でしか言えなくなるんだな・・・

「修復は大体終わったって~。ここ授業の始業と終業以外情報伝わらないようになってるからね~」

「あ、そう。」

「全部君について行っちゃったからね~…様子を見に急いで後を追ったら扉が二つとも壊れてるんだから驚いちゃったね~!」

クリーム色の長い髪の男は嬉しそうに勝手に語っていく。気づいてる?私滅茶苦茶引いてるんだけど・・・気づけよ!!

「地下に向かう階段まで悪魔が溢れてたのも驚いたね~!開けてくれって叫んでたのが聞こえたのが気になったけどね~・・・」

「それなら癒して適当な場所に転移させて置いた」

「あれだけ戦えていれば転移できるのも納得だね~」

クリーム色の長い髪の男はこちら側の反応を楽しんでいるのか一方的に終始笑顔のまま親しげに話しかける。が、私が引いているのさえも楽しんでるように見えるんだけど…

しかし何も知らない男達にとってその状況はとても異様だ。女は後ろ姿で表情が見えず何か話しているのかも分からない状態だが男の表情は今まで見たことのない表情でさらに混乱する。

「空気読めねーのかお前は」

多分読めないんだと思う…

耳にかかるほどの長さの髪の短い男はクリーム色の長い髪の男に低く怒りを含んだ声色で話しかける。クリーム色の長い髪の男はそれさえも気にする様子はなくただ楽しそうに笑顔を浮かべているだけだ。

このチャラ男なんでこんな笑顔なんだ?絶対まともそうな男怒ってるよな?それさえも楽しいって事!?

「朝ぶりだね翔。呼んでるけど~?」

「おい!!名前を教えるなと言われただろ!!」

クリーム色の長い髪の男は耳にかかるほどの長さの髪の短い男の名前を呼ぶ。その男、翔は先ほどよりも大きな声を上げクリーム色の長い髪の男を制止する。

「え」

翔?今翔って言った?

「君どうしたの~?」

声を小さく漏らしクリーム色の長い髪の男の横に居る耳にかかるほどの長さの髪の短い男、翔の顔を見つめ大きく目が開く。その表情は感動と驚きと、疑い

「おい!!…どうしたんだお前っ!?」

10センチほど高いその男の肩に手を置き勢いよく揺さぶる。その男は直ぐに手を払い睨み付けた

私には、幼い頃同じ年の幼馴染がいた。分かれは最悪で二度と会うことは無いと思っていたけど…

「翔…ちゃん」

本当なのか、違うのか。二つの感情が渦巻く中、小さく小さく呟くように囁くように耳にかかるほどの長さの髪の短い男、翔の名前を呼ぶ。

「その呼び方は止めろ。…呼んでいい奴は一人しかいない。もう居ないんだよ」

真剣な表情で耳にかかるほどの長さの髪の短い男、翔は言う。が、ついポロっと思っていることが口から出てしまっている事に気がついた頃にはもう遅く、全て口からこぼれ出た後だった

「いや目の前に居るから。私いつ死んだ??」

あ、やってしまった…だってなんか死んだみたいになってるし!そもそも目の前に居ます~!!なんで気が付かない!!自分も気が付いたのチャラ男が名前呼んだ後だけど!!

「・・・!?」

一瞬固まった後、二、三歩後ろへ下がると目を見開いたまま再び硬直する。驚きすぎだろ!!

「感動の再会ってやつ?・・・とりあえずさ、協力してくれるよな?」

「・・・する以外選択肢ねーだろ。おい、お前らも手伝え」

耳にかかるほどの長さの髪の短い男、翔は薄桜色の髪の短い男とマッシュルーム型の短い髪の男を呼ぶ。

「しょうがないなぁ…知り合いなんだぁ」

「…あぁ」

「知り合いだったんだね~!」

耳にかかるほどの長さの髪の短い男、翔の傍まで来た男達はじっと扉を見据える。既に扉の意味を成しておらず原形を無くしたそれから勢いよく悪魔がこちらへと向かう。その際に結界も消失してしまっている。と


「聖杯召喚」

「聖杯、召喚」

「聖杯召喚するよぉ!」

「聖杯召喚~!」


瞬時に耳にかかるほどの長さの髪の短い男、翔。マッシュルーム型の短い髪の男、薄桜色の髪の短い男、クリーム色の長い髪の男の順に聖杯召喚を唱える。

四人の男達の体が光を纏い、近づいてきた悪魔は悲鳴に似た声を上げ消えていく。男達の胸元がより一層光り輝きcardの形をした空間が現れ服の上に現れる。

 それに手を入れ一気に引き抜けば透明な柄の先に小さな刀の欠片が真っ直ぐ刀身のように形作られている。そのまそれをそのまま振り下ろせば欠片が宙へと舞い、柄に色が宿る。

パズルの様に欠片同士が構築されていく。美しく輝きを放ちやや広い身幅に片方のみを刃とし、切っ先は大きく鋭く反りのある長めの刀身に波紋が浮き出た。はばきと切羽によって支えられた金色の鍔と自身の髪の色と同じ柄が淡く光り、弾ける。弾けた光は刃の粒子の様に輝いている。


 それに手を入れ一気に引き抜く間もなく鍵が幾つにも重なり散らばり、淡く蒼い光を放つ。

cardの形をした空間から溢れるそれは構えを取ると在るべく場所へ集まっていく。流れる星の如くそれは所有者の手へと形を作る。真ん中のみ多少厚く両鎬【リョウシノギ】で両刃とし、反りなどはなく直刀だが丸みがあり剣だ。

鍵が柄部分へと集まり、透明な柄へと変貌する。柄の中心に鍵の印が入り、紫色の光が淡い蒼とぶつかり合い、弾ける。

 

 それに手を入れ一気に引き抜けば薄桜色の文字が手に巻き付く。

それは踊るように増え、武器へと姿を変える。柄は濃く桜色に色づく。平たく厚く幅広に片方のみを刃とし、中心に雪と桜を混ぜた様な透かしが入っている。

短刀よりかは長く鍔はない。刀身が薄桜色に染まり反射する。構えれば薄桜色が強く光り、弾けた。


 それに手を入れ一気に引き抜けば二本の鎖を螺旋状に捻り螺旋にあしらわれた鉱物が光り輝く。

長い長いその鎖は粒子となり再構築されていく。平たく厚い身幅に片方のみを刃とし、切っ先に近づくほど細く両刃の刀身に鎖が何重にも巻き付いたような金と銀の色が光を受けて眩い光を放つ柄が一瞬光り、弾ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る