第6話

斬撃により壁は抉れ、原形を留めない黒い何かや灰が部屋中に広がっている。そして何より尽きることなく永遠に燃え続ける炎と悲鳴に似た声を上げている悪魔が大量に浮いている。

これをカオスというんだろう、うん。

「修復したいけど無理そうだね~…」

「…やっぱり結界に穴が開いた訳か」

クリーム色の長い髪の男は部屋の状況を確認し、困った表情を浮かべ話しかける。返って来た問いに苦笑いを浮かべた。

結界を塞ぎ終わるまでどのくらいかかるか全くわからないし、何よりその間結界付近に居る悪魔を倒しても倒しきれなかったのが部屋に入り込んでくるからな…。

「窓、閉めれればいいけどね~」

クリーム色の長い髪の男の視線には、枠組みさえ破壊された窓、だったものがある。…悪魔が入ってきた時に窓が壊れて戦ってる時にはもう枠組みどころか窓の原型無くなってたもんな!!結界修復してもしなくてもどの道悪魔はこの全壊した窓から入ってくるって言う悪循環がもう…!あ、待てよ。

「穴が開いた周辺に悪魔が無くなればその分効率が上がって修復が早くなる?」

「それは勿論だよ~。その方法を探すより怪我を治さないとね~」

クリーム色の長い髪の男が指さす方所を見れば、血は固まっているもののいつの間にできたのか深いひっかき傷が左手に出来ていた。あー・・・丁度いいか。出来るならやり痛くないけど!!ずっと戦ってるとか疲れるし何よりめんどくさい!!

「ここから一番大きい部屋はどこにある?」

「ここから一番近くて広い場所は地下の実戦場だよ~。今日はそこで僕らのクラスが実戦授業をしているからね~。」

クリーム色実はずっと思ってたんだけどチャラ男、頬にべったり血がついてるんだよ!!それで笑われたら逆に恐怖だよ!

クリーム色の長い髪の男は笑みを浮かべ問いに答える。そしてすぐ、説明を始めた。

「そこから見えた場所が実戦場だね~。練習場が使えればよかったんだけどね~?」

「あ、そう…」

クリーム色の長い髪の男は悪魔が説明中に襲って来る間も動じることなく話を進め、説明が終わった今も悪魔を軽くあしらっている。その理由は、悪魔に掛けた術だろう。襲ってくる悪魔達は一瞬で術により炎に包まれて行く。軽くあしらうだけでも十分だった。

いや、あの…悪魔が球を打つ感じで軽く遊ばれながらあしらわれていくのを見ると何とも言えないよ。剣って、斬るものだったよだよな?向かってきた悪魔を打ち返す用に作られた奴じゃないよな!?気になって話に集中できなかったわ!あと、思ったよりもちゃんと説明してくれることに驚いた。

「説明したのはいいけどね、どうやって悪魔をそこまで誘導するつもりなのかな~?」

バレてる!…まぁ、流石にこの状況で分かるか。クリーム色の長い髪の男はは含んだ笑みでこちらをじっと見つめ答えを待つ。が、徐々に顔のお距離が近くなっていく

「だから、近い!」

「そうだね~。で。どうするの?」

「どうするも何もこうするんだけどっ」

一歩下がり、仕舞うことなく右手に持っていたそれを元々怪我をしていた場所に当て力の限り引く。痛みを感じる素振りなく、それを左手から離すと血が噴き出し溢れ血だまりを作っていく

「な、にやってるのかな~!?」

クリーム色の長い髪の男はその光景を慌てて止めようとするも制止され一部始終を目撃した。唖然としていたが直ぐに持ち直し左手を掴もうと手を伸ばした。がそれは届かない。中にいた悪魔が、一斉に水たまりを作った血に群がり始めた。しかしすぐに様子が変わる。

悲鳴か叫び声か、聞いたことのない低い声と人の言葉なのか悪魔の言葉なのか。それさえも分からない言葉に似た声を上げ目の前でほとんどの悪魔が弾けた。パンッという空気が破裂したような音と共に灰へと変わり浮いていたそれは霧となり、拡散した。

生き残った悪魔は形を変える。体はそのままに手足が生え、目は血が固まった様な色になりより黒に染まる。

変化した悪魔達は血だまりではなく、血が出ている元凶である左手に一気に襲い掛かってくる。血を吸った悪魔の大半が消えたとはいえ、生き残っている悪魔の数も多い。何より術で燃えていた悪魔が全て消えてしまったので炎で殲滅することは不可能となった。


…久しぶりにこの光景を見た気がする。よく見ていた光景だから特に何とも思わないけど言えることは相変わらず気持ち悪い!

再び剣を構え襲ってきた悪魔達を軽く薙ぎ払えば悲鳴に似た声をあげ消えていく。しかし、血の匂いに誘われた悪魔達は全壊した窓から容赦なく襲い掛かってくる。それは何度も何度も何度も、ループする。


「癒したまえ」

隙を見て唱えれば淡い光を放ち傷を塞いでいくが、途中でそれを止める。静かに血がポタン、ポタンと落ちていくのを確認し再び剣を振るう。クリーム色の長い髪の男はそれを見て再度攻撃を始めた。それを確認し、外に飛び出した

「本当に行くんだね~!あとこれ渡しておくね!」

「勿論。・・・傷治しておいたから」

「え~!?」

扉から出るとすぐ左を曲がり走り出す。すぐに後ろからクリーム色の長い髪の男が話しかけてくるが、悪魔がこちらに来ることは無い。きっと笑顔で術をぶっ放してるんだろうな…。

ついでに自分の傷を治すと同時にチャラ男の傷を治しておいたことを振りかえり際に言ったら滅茶苦茶驚いた声が聞こえてきてちょっと笑った。後若干してやった感もある!!てか、一体チャラ男は何を投げたんだろう…制服にスカートに突っ込んだから確認できない!


走り出して一分もしない頃、目の前に大きな扉が見えた。後ろを振り返り悪魔がいないことを確認すると扉に近づく。…これどうやって開けるんだ!!天井に枠組みがあり、細かい装飾が施されている。その真ん中に頑丈そうな厚い扉がある。それも装飾が施されており扉前の右横には何かを翳すであろう透明な機械がある

壊せるだろうけど壊したら罠でも発動しそうな感じがする…。チャラ男が投げてきたやつが関係あったりする感じか?

「…っ?」

気配を感じ一瞬振り返ると廊下は真っ黒で慌てて前を向いた。廊下を飲み込む様に渦を巻きながら前へ前へと迫りくる悪魔。血を吸い消えていく者や生き残る者、まだ血を吸っていない者が混ざり合っている

なにあれ…なにあれ!!あんな気持ち悪いの久しぶりに見たぞ!?

ポケットに手を入れると四角形の物が出てくる。一か八か!!と、四角形の物を叩きつけるように透明なケースに置くと、ピピピ…と音が聞えやがて

≪認証コード確認。本人以外の使用認証確認…確認完了。認証済みの為ロックを解除します。≫

人間とも悪魔とも異なる音声の後鍵が開く音と共に扉が消え、閉ざされていた通路が開けた。

「扉消えるのかよ!!開くと思ったわ!」

それと、透明なケースに亀裂入ってるけど見て見ぬふりをしよう!元々入って、ないけど入ってたんだよ!うん。

翳したカードをスカートのポケットに押し込み、走り出す。その数秒後、バキバキバキッッ!!とへし折った音が聞えたがそれを無視し、道なりに走る。…見るからに高そうなやつ壊しちゃったよ!!あえて後ろは振り向かない…どうなっているのかが怖いとか思ってない。

扉を抜けて少し先を行った所、右側に通路がありその先に螺旋階段が見える。

「あー・・・」

急ブレーキをかけ勢いをつけ後ろを向く。剣に力を集め悪魔をギリギリまで引き寄せ、放つ

「光を集め、鋭く閃け。ー閃光」

刹那、鋭く光り剣がまるで伸びた様に一線を描く。攻撃を受けた悪魔は死すら感じることなく消える。それは敵を全滅させるほどの攻撃、瞬きが終わる間までに攻撃階数は100を超えると言われている。後ろに居たはずの黒い悪魔は見えなくなったが、迫りくる気配を感じ再び走り出す。残されたのは破壊された扉と、血の跡のみ。

右側に見えていた通路に入り螺旋階段を目指す。短い通路を抜けると大きな螺旋階段が上下に続いている。螺旋階段の周りに伸びる通路には生徒の姿も見受けられる。

「・・・は?!」「女子がいるぞ!!?」「なんでだよ!!」って声が聞こえるけど無視!!階段に飛ぶこむ様に進み勢いをつけて下へ降りていく。下りきった先に開けた場所があり左右に階段がある。右側の階段に差し掛かると生徒の声と共に悪魔の気配を感じスピードを上げる。一階に差し掛かると階段は螺旋型になり周りの壁が透明になる。階段はそこでなくなり広い空間が広がっており、靴置きが置かれ玄関ホールだと分かる。

確かチャラ男の説明だと・・・

‶今僕らが居るのは本部棟の一階にある仮眠室だよ~。まず出たら左に真っ直ぐ進んで行くと直ぐ扉があってその扉を抜けて通路を進むと螺旋階段があってね~。そこを下りていくと開けた場所に出るから右側にある階段を上ると別の棟の一階の玄関ホールに着くよ。正面から見ると君は右側の階段から出たことになるよ。

「右…」

‶君から見て右側にある階段、広い階段が二つ隣同士であるけどどっちでも行き先は変わらないからね~。二階に上ると扉があってその扉抜けると正面の教室の横に階段があるからそこの階段下りていけば実戦場に着くよ〟

説明長いし話し方が独特で理解するの大変だったな。と言うかこの学校広すぎるし複雑すぎて迷路みたいじゃなくて迷路なんだけど…!!

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