第5話

「そうかな~?」

「そうなんだよ」

クリーム色の長い髪の男は反応が面白いのか、楽しそうに口角を上げ見つめる。何が楽しいのか全く分からない!!

「おはよぉ!」

「…どうも」


目覚めは最悪だけどな…。チャラ男の後ろからいつの間に居たのか・・・背低い奴でいいか。背が低い奴が

顔を出し話しかけてきた。寝かされていたベッドから半身を起こして周りを見れば、個室にしては少し広い部屋には私が使っているベッドのみ。枕元側直ぐに扉があり、ベッドの左横直ぐにソファー型の椅子が一つありそこにはクリーム色の長い髪の男が座っている。

その後ろ側に大きめな机とソファー型の椅子が三つ置いてあり、後ろは全面ガラス張りでカーテンが付いてるが全部開いており外の様子がよく見える…ってそんなことはどうでも良くないけど!!ここはどこ!!

「ここは男子校の仮眠室だよ~」

「男子校・・・男子校!?」

驚きの余り顔の表情が抜け落ち真顔になる。なんで私男子校に居る訳!?

「…女が目を覚ましたと伝えに行く」

マッシュルーム型の短い髪の男は椅子から立ち上がり扉に手を掛ける。

「よろしくね~」

「…忘れるなよ」

「勿論~」

クリーム色の長い髪の男とマッシュルーム型の短い髪の男はお互いに背を向けたまま何回か言葉を交わすとマッシュルーム型の短い髪の男は振り返る事も無くそのまま部屋を出ていった。一回もこっち見なかったぞ…嫌われてるとかそう言う次元じゃないな。チャラ男の顔が見たくなかったって事にしておこう、うん。


「さて。…僕今すぐに確認したいことがあるんだけど~」

「確認?」

「そう、言いたいことわかるよね~?」

「全く。確認って何?」

いぶかしげにクリーム色の長い髪の男を見る。

「君、聖杯使えるよね?」

「今更…?使えるけど…」

何言ってんだこいつ…その目で私が召喚したの見たよな?確認する理由が分からないんだけど…。困惑しながらもごく普通に言葉を返せば、クリーム色の長い髪の男は薄く笑みを浮かべた。その笑みに鳥肌!!

沈黙が続く中、顔ごと視線を下にずらす。

…なにこの空気?気まずい!!耐えきれなくなり顔を上げた瞬間

「ちょ・・・!!」

驚き余りベッドから飛びのいた。その際にベッドに足ぶつけたが、それどころじゃない!

「どうしたの~?」

どうもこうも悪魔が大量に窓ガラスにくっついてるんだけど!この光景ちょっと前に見たばかりだわ!男子校は悪魔が侵入できないように敷地内に強力な結界張ってるって先生が投げたあの教科書に書いてあったよな!?なのにどうして学校内に悪魔がいるんだよ!

「・・・ま、窓」

「ああ?外綺麗だよね~・・・女の子らしいところもあるんだね~」

違ーう!てか窓ガラスのに黒い悪魔がてか悪魔しか見えなんだよ!外が綺麗かなんて分かるか!さっき見た時は綺麗だったから悪魔が張り付いてなかったら綺麗なんだろうけど!

私の心の叫びに気付く訳もなくチャラ男は嬉しそうに窓に近づくと手を掛けた。なんでそんなに嬉しそうな顔してるのか理解不能なんだけど!つか、開けるなって!!

「ちょっ!まっ!!」

「え?」

止めようとした頃にはもう遅く、無情にも窓が大きく開いた。スライド式じゃなくて押す方だったんだ初めて知ったな…と自分でも目に生気が無くなるのが分かった。なんで悪魔が開見えるはずの奴らに悪魔が見えてないんだよ!!

「ぼ、僕ぅこの事知らせてくるねぇ!!」

窓の近くに居た薄桜色の髪の短い男は悪魔が入ってくるや否や凄い勢いで言葉をまくしたてると目の前から姿を消した。・・・このヘタレ!絶対逃げだろ!!

部屋に入って来た悪魔は扉を壊し外に溢れだし視界は一気に黒に染まる。外では野太い悲鳴が聞えバタバタと足音が聞こえる。これ間違いなく数人逃げただろ

「どうしてだ!?」

「それは私が知りたい!」

なんで悪魔に気が付かなかったのか!!

「どうしてただろうね~…このくらいなら僕が手を下す必要ないね~」

「はぁ?」

いやいやいや!戦える奴私とお前しかいないだろう…

周りを確認できる状況ではないままクリーム色の長い髪の男と会話を続ける。部屋の外へ悪魔が大量に出て行ったのか視界が少し開けお互いの顔が見れるまでに回復する。クリーム色の長い髪の男は、こちらをじっと見つめ離さない。…お前もやれって事か。目で語るな目で!


「…聖杯召喚」

「聖杯召喚~!」


お互いの体が光を纏い、悪魔は悲鳴に似た声を上げ消えていく。胸元がより一層光り輝きcardの形をした空間がダイヤの様な形へと変わり服の上に現れる。それに手を近づければ空間から柄が現れぎゅっと握り素早く抜き出せばレイピアに似た細身の刀身に複雑な装飾が付いた柄が一瞬光り、弾ける。


クリーム色の長い髪の男もまた、胸元がより一層光り輝きcardの形をした空間が現れ服の上に現れる。それに手を入れ一気に引き抜けば二本の鎖を螺旋状に捻り螺旋にあしらわれた鉱物が光り輝く。

長い長いその鎖は粒子となり再構築されていく。平たく厚い片方のみを刃とし、切っ先に近づくほど細く両刃の刀身に鎖が何重にも巻き付いたような金と銀の色が光を受けて眩い光を放つ柄が一瞬光り、弾ける。

お互いに武器を構え攻撃態勢に入った。

そう言えば、クラスメイトに聖杯使うのバレなかったのって、力が無いと聖杯を見ることが出来ないからだっけ。力が無いと聖杯部分が粒子の集まりに見えるか微かに光っているように見えるだけって例の教科書に書いてあったわ。

「見間違えじゃなかったんだね~」

「あの状況でどう見間違えるんだよ…」

疑い深いなこのチャラ男…。クリーム色の長い髪の男は柄を一層強く握り剣に力を込める。剣から凄まじい光が溢れ、凝縮された。

「そうだよね~…切り刻め、風剣」

言葉に同意したままうっすら笑みを浮かべ自らの剣を投げれば風の様に自由自在に部屋を駆け巡り再びクリーム色の長い髪の男の手元に戻ってきた時のは悪魔は悲鳴に似た声を上げる隙も無く消えていた

こわっ…え、えげつない!!私に笑いかけてきたあの笑みとは違う笑みを浮かべたまま容赦なく悪魔一掃したんだけど。あぁ、不敵な笑みってこう言うことを言うんだな。しかも窓から入ってくる悪魔を未だに同じ技で倒しまくってるのがなおさら怖い!!だけど、強い。男子校の中でももしかしたらかなり強いのかもしれない。

「・・・じゃあ女子校のあの弱さって幻だったって事か?」

こんなに強いんだったら女子校の時だってすんなり力使えただろうに…。

「後で気が付いたことだけどねー…空間魔法が使われていた形跡があったんだよ~。悪魔の力を増大させる付与付きでね~。おかげで僕たちはいつもの3分の1しか力を使えなかったんだ」

小さく呟いたはずの声は、しっかりと聞こえていたのかクリーム色の長い髪の男はその疑問に答える。悪魔の力を増幅させる空間魔法付与、か。ーまさか

「此処にも同じ空間魔法付与が使われてる?」

「多分ね~…幸いここは聖杯増幅付与が付いた結界が学園の敷地内全体に張られているおかげで何とかいつもと同じような力で戦えてるんだよ~」

凄まじいほどの光を放っていた剣は込めた力が無くなったのか輝きを失いクリーム色の長い髪の男の元に返って来た。…やっぱりこのチャラ男強い。何よりちゃんとした知識がある

「…褒められるほどの事は何もしてないよ~」

「え?」

「さっきから思ってる事ちょっと漏れてるよっ…と!悪しき者を斬り、燃やせ~」

なんで私が思ったこと分かる訳!?心読めるって声に出てたのかよ!!クリーム色の長い髪の男は先ほどの風と同じ要領で力を貯め、悪魔の攻撃をかわし部屋一体を炎で斬り焼き尽くす。こちら側に炎が襲ってきたが軽く薙ぎ払丁度良くこちらに向かってきた悪魔をそれが焼き尽くす。

「理を失い飢えた悪き魔に混沌たる祝杯を。かの者が消滅するその日まで、連鎖し祝福された終焉を与えろ。祝恩連鎖。」

炎が消える直後に慌ててそれに手を翳し付与をする。付与された炎は消えることなく悪魔に染していく。それは終わることなく、永遠に形無くなるまで燃える。皮肉だよねこの術。祝福って、嫌味かな!これ作ったのがlabyrinthとか認めたくないな。

そもそもほとんどの術はlabyrinth考案だって言われてるからな。本当に何と言うか…

「えげつないね~…!」

「あー…お互い様だと思う!」

部屋の惨状を見てお互いを何とも言えがたい複雑な表情で見る。

「流石に、やりすぎた~?」

「ヤバい!やり過ぎた!!」

少女とクリーム色の長い髪の男の声が重なった。

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