第3話

「さて、始めますか?」

「の、乃宮さん…!」

「あっはい!?」

突然、近くから声が聞こえた。誰だよ!!と、慌てて振り返ればクラスメイトが息を切らしながらこっちへ向かって来る。

手には壊れかけた機械が握られており体は小刻みに震えているように見えた。

行きなり話しかけてくるのやめよ?!驚いて剣落としたせいで元に戻っていったんだけど!!しかも返事した挙げ句声裏返ったから!!恥ずかしいわ!!

・・・それにしてもまさか戻ってくるなんて思わなかった。

悪魔は新たに現れた少女など居ないかのようにじっとこちらを見つめてくる。相変わらずめっちゃ見てくるなこいつら。穴開きそうだ…近くまで来たクラスメイトの腕を取り後ろに隠すように立つ。クラスメイト、確か名前は

「は、早く逃げないとっ!」

「え、あ、うん。」

…忘れた。話しかけられて忘れた!!適当に返事を返せばどのような表情でこちらを見ているのかは分からないが、引っ張られるような感覚がした。

そこを見ればセーラー服の裾を握り締めているのが見えやがて小さな声で返事が聞こえた。

「一緒に逃げよう…!」

「…どこに悪魔が居るのか分からないこの状況で逃げれないよ」

幸い、私が聖杯を使える事には気が付いていないみたい。

逆に今武器を持っていなくて良かった!この状況で武器持って空中切ってたら間違いなくバレる!!それに、悪魔全く攻撃してくる空気が無くなったんだけど待ってるのか?空気読める悪魔とか怖いな!いつもはしきりに体に巻き聞こうとするのになんか可笑しい気がする。

・・・でも、今ならクラスメイトを助けられる。と掴んでいる手に触れようとした時、少し遠く教室の外から足音が聞こた。

悪魔も気付いたのか教室の入り口をじっと見つめる。

クラスメイトを庇いつつ教室の入り口へと視線を向ければ足跡は次第に大きくなりやがてピタリと音が止んだ。異様にタイミング良いことばっかり起きるんだけど…

教室の入り口に立っていたのは三人の男達。全員が同じ制服着てるのは分かるんだけど庇っている体制が辛くて顔まで見れない…

「あの人たち…男子校のっ?」

クラスメイトが小さく呟く。驚きと疑問が交った声だ。

「男子校?」

「う、うん。凄い格好良い人達ばっかりで…交流会休んでたもんね」

「うん。」

交流会休んだんだな。…割と休んでるからいちいち覚えてないな!

…それにしてもどうして男子校の生徒たちがここにいるのか分からないが格好いいと言う割と要らない知識も増えた!

ということは今いる奴らも格好いいって事になるのか?格好いいか…そう言えば格好いいというかイケメンな奴居たな。もう10年も会ってないけどな!

「君たち~!危ないから早くこっちに来てくれるかな~?」

「あっ!?」

チャラいな!!声がすでにチャラい!と、クラスメイトの声が聞こえ裾を掴まれている感覚が無くなり慌てて後ろを振り返れば一人の男に庇われているクラスメイトが目に入る。その男ーこげ茶色の瞳に肩まであるクリーム色の長い髪、緩く動きをつけているのか毛先を遊ばせているーを見てチャラい!!と叫ばなかった私をほめて欲しい。マジで。まぁ、表情には全く出ていないけど寧ろ真顔だけど。てか、こっちに来てと言いながら自分で引き寄せてるしそもそも私は無視かよ!いいんだけどさ!!

「結界張りたいんだけど苦手なんだよね~」

そう言いながらもその男は小さく何かを唱える。すると私の前に透明な膜の様なものが現れた。声小さすぎて何唱えてるのか全く聞こえなかった…それにしてもこの結界強度弱そうなんだけど大丈夫かこれ?透明膜の様なものに触れると膜に穴が開いた。ーやばい

「ん~?結界に穴開いたね~」

だよね!!そしていちいち言い方がゆるいし軽い!穴は目の前で修復され、直ぐに元通りに戻った。それを見て息をはいた。どうやら穴が開いた原因までは分かっていないみたい。良かった!!

「…この女達を庇いながら戦うのか。」

薄紫の瞳にマッシュルー型の黒が強い灰色と紫色の短い髪の男が入口に居たもう一人の男を置き去りにしたままクリーム色の髪の長い男に反論する。

「そうするしかないよね~。」

と、軽い口調で同意する。

「…戦いの邪魔になる。女は足手まといだ」

「本当に女の子が嫌いだね~」

またマッシュルーム型の短い髪をした男が反論すればおちゃらけら様子で発言した後小さく笑った。マッシュルーム型の短い髪の男はそれ以降口を閉ざした。

なんか何もしてないのに好感度がないどころかマイナスなんだけど。女が嫌いとか心底どうでもいいから。つか、こいつら仲いいのか悪いのか分からないんだけど…そして、今だに動かない悪魔達、やっぱり可笑しい。空気読む悪魔とかやっぱり嫌だな!

「そんな事よりもぉ!早く倒した方がいいと思うよぉ?」

今までクリーム色の髪の長い…呼びにくい!チャラ男ともう一人、女嫌いでいいや。チャラ男と女嫌いが何かやってても反応一つしなかったのにいきなりぜんまいを回したように動き出すのやめて!!なにより色々キツい!!話し方割と酷いぞこの男…男なのか??

濃い桜色の瞳に透明感のある薄桜色のふんわりとした自然な短い髪の男がクリーム色の髪の長い男とマッシュルーム型の短い髪の男を交互に見る。

チャラ男と女嫌いは気づいていないだろうし、クラスメイトはそれ何処じゃないだろうから気づきもしないと思うけど、スキップしながら近づいてきたよ!?なんで誰も見てないんだ…死ぬほど笑顔だったから!!

「一匹が小さいからやりづらいよね~」

「…関係ないな」

「じゃあ眠って貰おうよぉ…なにぃ!?」

薄桜色の短い髪の男が私とクラスメイトを交互に見た時、クリーム色の長い髪の男が張った結界が突然破られ結界が消えた。

クラスメイトの悲鳴と男たちの慌てた大きな声が聞こえる。余りの恐怖にクラスメイトは意識を飛ばし、クリーム色の長い髪の男がとっさに受け止める。

瞬く間に私に悪魔が群がり視界が黒で覆いつくされる。

あいつらが攻撃をしているのか視界はある程度元に戻るけど直ぐに黒に染まる。数え切れない程それが繰り返され、攻撃はだんだんと弱くなっていった。今いる悪魔ってそもそも小さいけど…?

「…ハァハァ」

「この悪魔っ強いよぉ」

「もう死んでいるかもね~…」

…いや、あの。死んでないから!!確かに聖杯持ってない人達は触れた瞬間死ぬけど私死んでないから!!

…しょうがない。クラスメイトは気を失った所を確認したしもうこれ私がやるしかないだろう!!

つか、敵を目の前に気を抜きすぎなんだよ。これが男子校の生徒だとか、信じたくないな。

男達の声が重なり攻撃が始まると悪魔も消耗しているんだろう。黒に覆われていた体が解放される。ー今だ。

「…聖杯、召喚!!」

胸元がより一層光り輝きcardの形をした空間が一瞬でダイヤの様な形へと変わり服の上に現れる。

それに手を近づければ空間から柄が現れぎゅっと握り素早く抜き出せばレイピアに似た細身の刀身に複雑な装飾が付いた柄が一瞬光り、弾ける。

そのまま一振り振りかざせば周りに居た悪魔は悲鳴に似た声をあげ消えた。

「っそんなまさかぁ!?」

「女の子が聖杯使えるって聞いたことないね~…」

クリーム色の長い髪の男と薄桜色の短い髪の男は驚き、マッシュルーム型の短い髪の男は表情を崩すことなく見つめる先には、剣を構えた一人の少女がいた。

…バレた。というかもう、ばらすしかなかったよ!!

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