第57話

廃工場につき、私達三人もバイクを適当な場所に停めた。





「……華」




「ん?どした、久流」





チビニャンコの名前を口から溢し、私の服の袖を控えめに引っ張るというなんとも可愛い行為をする愛らしい生き物に視線を移す。




私とほぼ変わらない身長のチビニャンコが私をじぃっと見つめていた。




……かと思いきや。





「うおっ!?ちょ……く、久流っ!?」





ぎゅうううっと、それはもう力強く抱き締めてきた。




いきなりのことでビクッと反応してしまった。なんなんだ、突然。




おろおろと意味もなく手を動かして混乱していると、どこか嬉しそうな顔でチビニャンコが私の肩に頭を擦り寄せた。





「……今だけ、華を独り占め」





おおおおい。なんだこの可愛い生き物は!私を翻弄して楽しいか、チビニャンコ!




……いかん。そんな可愛いことされたら……私も抱き締めたくなるじゃないか!





「久流、可愛いなぁ」




「……華の方が可愛い」




「格好いいとはよく言われるけど可愛いは慣れねぇな」




「華、可愛い」




「………ん、サンキュ」




「おーいおいおいお二人さーん?なーに二人きりモード全開になっちゃってんのー?俺いるからね?そんでここ一応倉庫の前だからね?」





抱き締め合って会話していたら変態ノッポが割って入ってきた。チッ。邪魔しやがって。

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