第37話

千里は私の笑顔を見てさらに笑みを深めると、「わーお。いきなりそんな顔しちゃうんだねー」とからかってきた。





「うん。お前相手なら隠したり誤魔化したりする必要ねぇし」




「清々しいほど正直だねー。でも、笑顔作ってる時点で誤魔化してんじゃん」




「悪いね。無表情になれないのは昔からの癖さ」





こいつ、なかなか鋭いね。




どうせ誰も見抜けやしないだろうって高を括ってたのにさ。




明らか演技してるのとは違うからね。私はあくまで自然体だからさ。だから、油断してた。





まぁバレたところでどうにもしないけど。





これがたとえば輝とか幸とかだったら、白龍抜けようかって考えてただろうな。他人に無関心な千里と違って、あいつらは内側に入って来ようとするから。




自惚れでもなんでもない。あいつらの人となりを知ってしまえば、そう結論付けてしまう。





あいつらなら、私の中の触れられたくない領域に手を伸ばすだろう。




だがその点は千里なら心配してない。





その胡散臭い笑顔はどうしても好きになれないが、他人に無関心なところは私的には安心するよ。





……今現在、その胡散臭い笑顔をしている自分が言うのかよって突っ込みたくなるけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る