第35話

「距離とってるっつっても、んなあからさまに態度で示す訳じゃないよ?それなりにテキトーに合わせるし、たまーにこうして世話やいてみたりもするしね」




「……ふーん」





ま、こいつ世渡り上手っぽいもんな。ああそういや、今までも何度か蓮や奏をからかって遊んでたりしてたな。なるほど、こいつは隠れSか。





「今まで会った人間不信のやつって、皆あからさまに距離とったり壁作ったりしてたからなぁ。千里みたいなやつは珍しい」





冷蔵庫の中を見て何を作ろうかと考えていたら、冷蔵庫の扉に凭れた千里と目が合った。その顔はいつもと変わらぬ胡散臭い笑顔。……重い。凭れるんじゃねぇよ。





「……華ちゃんが、それ言っちゃうの?」





その台詞に、冷蔵庫の中を物色していた手を止める。





「……どーいう意味?」





僅かに睨むように見上げる。




ただでさえ千里との身長差がすごいのに、やや小さめの冷蔵庫の中を屈んで見てた体勢のまま見上げてるためさらにいつもより千里の顔が上に見える。





瞳に冷たい光を宿したまま千里は言った。





「華ちゃんてさぁ、女優かなんか目指してんの?」

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